複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.80 )
日時: 2011/06/26 13:22
名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)

「そういえば、柊神社というのは、どういう神様が祀られているんでしょうか?」

 暗い道を歩きながら、佳恵はふと、樅霞にこんな質問をする。
 柊神社に祀られる神に、少々興味があったようである。

「刀を大事にしているんだから、そういう類の神様が居そうだな……。」

 楓は、自分の予想を樅霞に言った。
 刀が大事なら、神様だって、戦いとか、そういうものだろうという考えで、言ったが、当の巫女は「う〜ん……。」と、眉間にしわを寄せていた。

「あら?どうしたのでしょうか?」
「いや……恥ずかしながら、私の神社には、どういう神が祀られているのか、分からないんだ。代々の巫女が、疑問に思っている事でもある。」

 とても意外な返答に、2人はポカンとして、何か裏切られた感じで、いっぱいだったという。
 それから、会話もなしに、ひたすら暗い通路を歩く3人。
 そしてついに、1番奥にある四角形の部屋に、たどり着いた。

 そこは、なぜか神聖な場所という雰囲気が流れており、部屋の中心に有る四角い台座が、三角形を描くように3個配置されているのが、それをもっと感じさせる。
 3つの台座には、それぞれ刀を置く為の台が上に乗っており、1個は東牙が持っているため、何もなかったが、後の2個には刀が置かれていた。

 カチャッと樅霞はメガネを上げ「元気だったか、長男坊と三男坊……今日はお前達に、会わせたい人が居る……。」と、言って、後ろにいる佳恵と楓に、目で台座まで行けと、目で訴えた。
 もちろん、2人は黙って頷き、それぞれ台座まで歩き、目の前まで来た。
 そして佳恵は左手、楓は右手で、台に乗っている刀を持ち、そのまま鞘から刀を抜く。
 すると樅霞が「ふっ……どうやら私の賭けは、勝ちだったみたいだな……。」と、目を吊り上げて呟いたという。

「す、すごいですわ……この刀……。」
「どんなものでも斬れそうな雰囲気を出している……。」

 佳恵と楓は、あまりにも刀がすごくて、思わずこんな言葉を呟いたという。
 そして、刀を鞘に戻し、そのまま台座を離れ樅霞の傍に戻った。

 すると「ちょっと待ったー!」と、どこからともかく声が聴こえたという。
 3人は、声が聴こえた右側を見て、思わずポカンとしてしまった。
 そう、天使のような姿をした少女が、にこやかに3人を見ていたのだから。

「その刀を、持っていくのはいいけど。ちょっと試験を受けてくれない?」

 突然の言葉に、樅霞は「お前は一体何者だ?少なくとも人間ではないな。」と、メガネをカチャッと上げて言う。
 すると「私達は……柊神社の刀を守る……天使と悪魔……。」と、左側から違う声が聴こえ、3人の目はそちらに向けるが、またポカンとしてしまった。
 そう、悪魔のような少女が祈りをしていたのだから。

「刀を持つ者として……相応しいかを……確認したい……。」

 天使と悪魔の言葉を、聴いた樅霞は「家の神社には、いつからこんな守り神が居たんだ?」と、眉間にしわをよせながら、疑問に思っていた。
 すると、佳恵と楓は、1歩前進して刀を抜き「良いでしょう。」と、普段の垂れた目を、吊り上げ「良いだろう。」と、獣のような、おぞましい眼光をして、お互い言った。

「あっ、いやいや!そんな、力とかそういう試験じゃないから刀は閉まって!」
「野蛮…………です……。」

 2人の言葉に、佳恵と楓は、コケッと、拍子抜けをして、そのまま刀を鞘に戻した。
 後ろにいた樅霞は、咳払いをして、とりあえずこの場を、和ませておいたという。

「ふ〜……じゃあ、とりあえず私は、お胸が大きい女の人と話すから、そっちは犬娘を頼むね。」
「犬ですか……了解……。」

 天使と悪魔は、自分が話す人を決め、その人をじっと見つめた。
 見つめられた、佳恵は天使の元へ、楓は悪魔の元へ、ゆっくり足を運んだという。
 樅霞はただ、2人を、見守ることしかできなかったという。というか、見守らないといけない雰囲気だった。

「ちょっと失礼!」
「ちょっと……失礼……。」

 佳恵と楓が、天使と悪魔の目の前に来た途端、なぜか、天使は佳恵の大きな胸を揉み初め、悪魔は楓の尻尾を触り始めた。
 これにはたまらず、2人は若干、変な声を出してしまったという。
 天使からは「おお!本物だ!」と、いう一言。
 悪魔からは「もふもふ……本物……。」と、一言呟かれた。
 樅霞は、また咳払いをして、目をそらしていた。
 そして「や、やめてください!」「やめろ!」と、天使と悪魔を薙ぎ払い、佳恵と楓は落ち着きを取り戻した。

「うふふ……ちょっと気になったから触ってみたの。」
「ちょっと気になったから……触ってみました……。」

 満面な笑みを浮かべて、満足した天使と悪魔。
 佳恵と楓は「はぁ〜……。」と、溜息が見事にシンクロした。

「私の名前は、天魔 鏡子(てんま きょうこ)。天使であり、悪魔であるわ。」
「私の名前は……天魔 鏡子(てんま かがみこ)……悪魔であり……天使です……。」

 天使と悪魔は、声を合わせて、自分の名前を、目の前にいる佳恵と、楓に、それぞれ呟いた。
 すると、後ろにいた樅霞が、メガネをカチャッと上げ「なるほど……天使が地獄で悪魔が天国か……。」と、周りには聞こえないくらい、静かな声で呟いた。