複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.81 )
日時: 2011/06/26 13:25
名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)

「あなたは、その刀を持つ理由は?自分のため?友達のため?社会のため?」
「あなたが、その刀を……持つ理由……自分のため?友達のため?社会のため?」

 刀を、何のためにつかうかという事を、尋ねる天使と悪魔。
 突然すぎる質問に、一瞬戸惑ったが、佳恵と楓は「友達のためですわ。」「友達のためだ。」と、力強く一言で返答した。

「ふ〜ん……じゃあさ、その友達のために何を断つの?友達の正義?友達の悪?それとも友達自身?」
「……では、その友達のために、何を……断つの?友達の正義?友達の悪?それとも……友達自身?」

 友達のために、その刀で何を断つか?なかなか意味深な選択肢に、佳恵と楓は、色々と考えてしまったという。
 友達の正義は、なんとなく、その友達の仲間と捉えられる。
 友達の悪は、その友達の敵と捉えられる。
 友達自身は、その名の通り、友達のことを言っているのだろう。

 しかし、なぜ、そんな質問をするのだろうか?答えは、自ずと友達の悪に決まっているのに、どうして確認をするのか?どうやら、これに2人は、悩んでいたようだった。
 果たして、天使と悪魔は、その答えを望んでいるのか?刀は、その答えを望んでいるのか?すると、佳恵が「私は……友達を断ちますわ……。」と、天使に一言呟いたのだ。

「なんで?大切な友達なんでしょ?どうして断つの?」

 当然、疑問に思う天使。しかし、佳恵は「ふふ……。」と笑って。

「誰も、友達自身とは言っていませんわよ?私は、友達の心を断ちたいのです……確かに、友達の悪が1番賢明な選択かもしれません……ですが、まず、その友達の、まだ間違っている心や、区切りを断ってからでも遅くはないと思ったから……ただそれだけですわ……。」

 佳恵の言葉に、天使は「そういうことか〜……これは私の負けだわ……うん。あなたは、本当に友達のために刀を使うんだなって伝わってきた!柊神社の雪刀を頼んだわよ。」と、白旗を上げた。

 一方、楓の方は、やっと答えが決まったようで「私は……友達の悪を断つために使う。」と、悪魔に一言呟いた。

「やっぱりそう?……ちょっと面白い答えを期待していたんだ……けど……?」

 悪魔は、少々残念そうに呟いたが、楓は「残念だったな……。」と、告げ。

「あいにく、私には回りくどい答えはない。ただ、友達の悪を断ち、その友達を助けたい……助けられてばかりでは、少し歯がゆいしな……っと、私は思っただけだ。」

 楓の、真っすぐな言葉に、悪魔は「そういう真っすぐな所……嫌いじゃないかも……うん。答えは面白くないけど、合格……柊神社の花刀をお願いします……。」と、祈りをしながら、楓に刀を託した。

 こうして、佳恵と楓は、柊神社の刀を持つことが許された。
 樅霞は、ただメガネを上げて2人の姿を見ていた。
 しばらくして、樅霞が「とりあえず、目的は達成されたな。2人ともちょっと来てくれ。」と、佳恵と楓を、自分の近くに呼んだ。

「さて、佳恵が雪刀で楓が花刀か……2人が、どういう刀の扱い方なのかは知らないが、大事に使ってくれ……。」
「はい……分かりましたわ。」
「了解。」

 刀を、大切そうに握る、佳恵と楓を見た樅霞は、ふっ、と笑い「では、先に戻ってくれないか?私は少し、後始末があるのでな……。」と、呟き、そのまま部屋の中まで、歩いていった。
 2人は、とても気にはなったが、あまり首を突っ込んではいけないと感じ、何も言わず、神社の方向へ歩く。

「さて……もういいだろう?お前たちの目的を言え天魔姉妹……!」

 2人が居ないことを確認して、樅霞は、まだ部屋に居る天使と悪魔に、声を低くして、さらには威圧もさせながら呟く。
 すると、天使と悪魔は表情を変えるが、何も答えず樅霞を見た。

「だんまりか……仕方ない、少々荒っぽいが……。」

 溜息をして、こんな方法を使いたくなかったんだが、という表情を露骨にだして、樅霞は懐から、2枚のお札を取りだした。
 すると、お札を見た天使と悪魔は、突然「「うわー!やめてー!」「や、やめてください……。」と、慌て始めたという。

「なら、目的を言え。さもないと、天使には聖魔の札を投げ、悪魔には汚魔の札を投げるが?」

 巫女は、お札で2人を脅して、白旗を上げさせる。
 本当に、樅霞は巫女らしからぬ行動をする。

「目的とか言うけど……私達はただ、柊神社の刀を監視するとしか言われてないしぃ……。」
「詳しい理由は……上層部にしか分かりません……。」

 お札を、2枚懐に戻し「ふむ……。」と、ただ呟く樅霞。
 どうやら、この天使と悪魔は、ただ命令されて動いているようだった。

「でも、早く刀の持ち主を見つけないとやばいって、聴いたんだよね……。」
「ですが……無事に見つかりました……なので目的終了……です。」

 この言葉に樅霞は「刀の持ち主を、早く見つけないと危ない?」と、天使の言ったワードを気にした。
 そして「そうか……警告に感謝する。」と、何か閃いたのか、メガネをカチャッと上げ、そのまま走って、部屋から出て行ったという。

「……あの者たちに、神の御加護を……。」
「もし、閻魔に問い詰められたら、私が助けてあげるよ〜。」

 悪魔が神の御加護とか、天使が閻魔とか、つくづく、この天使と悪魔は、色々な意味で恐ろしかった。