複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.83 )
- 日時: 2011/06/26 19:24
- 名前: コーダ (ID: 46ePLi3X)
「あら……もう日が落ちる時間になっているのですね……。」
「綺麗な夕日だな……。」
地下から、地上に上がってきた2人が、待っていたのは、襖から越しから見える赤い光。
たまらず佳恵は、襖を開け、縁側に立ち、空を見上げていた、楓も縁側に座り、徐々に落ちる夕陽を見ていた。
「……所で、楓さん?あの時、友達のためにとか、言っていましたけど……友達とは、誰のことでしょうか?」
「えっ……と、友達と言ったら友達……。」
佳恵は突然、楓に少々イジワルそうに、こんな質問をした。
すると、思いのほか楓は動揺して、顔を下げ、ただ友達としか言わなかった。
「あら?どうして、そんなに動揺しているのでしょうか?」
「動揺などしていない!そういう佳恵はどうなんだ!?」
楓も、負けずと佳恵に反撃するが、これも思いのほか「えっ?と、友達ですわよ!」と、動揺して答えたようだ。
そして、なぜかこの瞬間、2人は顔を下げ、しばらく沈黙が続いたという。
「むっ?どうしたのだ、2人とも。」
「えっ……あ、いえ、なんでもありませんわよ!」
「そ、そうだ!せっかくだから、東牙に刀をみ、見せに行こう!」
突然、戻ってきた樅霞の一言が、2人を動揺させて、思わずその場から去ってしまった、
巫女は、ポカンとしながら「なんだ?」と、呟き、階段を隠すために、畳をもとの位置に戻した。
○
「あら?用事はもう済んだの?」
「はい……あら?東牙が居ないのですが……。」
佳恵と楓は、とりあえず、東牙と蓮花を探しに、部屋を探しまわって、やっと台所に居た蓮花だけを、見つけたという。
昔ながらの、石垣で、できた台所、ご飯を炊くものは釜なのに、この少女は器用に使いこなして、料理を作っていたのだ。
「東牙なら、買い出しに行ったわよ?ちょっと、材料が足りなくてね……。」
「お、美味しそうなにおいだ……。」
楓が、台所に充満する美味しそうな香りを嗅ぎ、石垣の上に置いてある、焼かれた魚をじっと見つめた途端、空腹が襲ってきたという。
すると蓮花が「はいはい。もう少しでできるから、待っていなさい!」と、楓の額を、人差し指で押す。
「すまんな……わざわざ、こんなことさせてしまって……。」
突然、佳恵と楓の後ろから、ひょこっとでてきたのは、済まなそうな顔をしている樅霞だった。
すると「良いわよ。こっちだって、勝手に材料とか使ったんだし……。」と、蓮花は石垣の上にある魚を見ながら、言った。
「それは、秋刀魚か……ちゃんと、旬を選んだ焼き魚にするとは……できる。」
「秋と言えば秋刀魚よ!他にも、主な魚としては鮭、鯛とか……微妙な路線で行くなら、ハタハタやキンキね。」
蓮花は、自信満々に、旬に詳しいという事は樅霞に主張した。
佳恵と楓は、一部、聴いたことがない魚の名前に、困惑していた。
「蓮花と言ったか?その知識は、どこで手に入れた?」
メガネを、カチャッと上げ、樅霞は質問する。
すると蓮花は「別に、ただ、9年間も毎日料理をしていれば、自然と身に付くわ。」と、作成中の味噌汁の味見をしながら、きっぱり言った。
「9年間もですか!?」
「しかも毎日だと……。」
「むっ……これは負けたな。」
佳恵、楓、さらに樅霞は、とてもびっくりして言葉を言う。
そして、女性にしか分からない謎の敗北感が、どっしりと乗っかってきたという。
当の本人は「うん。出汁も良い具合だわ……。」と、無駄のない動きで、調理を続行していた。
「買ってきたぞ……っと、どうした?」
ガラッと、裏玄関から東牙が水の入った桶を持って、声を出した瞬間、なぜか、全員がこの場所に集まっていたので、違和感を覚え、思わず様子を、訪ねてしまったという。
「あっ、気にしないで東牙!っと、ちゃんと買ってきてくれたかしら?」
「もちろんだ。木綿豆腐、2丁だろ?」
蓮花は、水の入った桶から、豆腐を1丁取り出すと「うんうん。」と、頷き、そのまま左手に豆腐を乗せ、包丁で上に3回、横2回ずつ、等間隔に切り、そのまま味噌汁に入れ、最後の1丁も、同じ方法で消費する。
ちなみに、豆腐2丁を、味噌汁の中に入れるまでに、かかった時間は、30秒も経たなかったという。
料理は、この面子だと、蓮花に敵う者は居ないだろう。
そう思いながら、東牙、佳恵、楓、樅霞は、邪魔にならない程度に、手伝いをする。