複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.84 )
- 日時: 2011/06/27 20:29
- 名前: コーダ (ID: 3P/76RIf)
「御馳走さまですわ……。」
「はい、お粗末さま。」
居間のテーブルを、5人で囲み、ご飯に焼いた秋刀魚と味噌汁、さらには漬けものまであり、最後には、羊羹も出された晩御飯。
4人は作ってくれた蓮花に、感謝して食べ終えたという。
「やはり蓮花が作ると、魚の焼き加減が丁度良い。」
「それ、私も思った……あれは、ちゃんと料理している人じゃないとできないよ。」
「味噌汁の出汁も良かったですわ……。」
「ふむ……私もこんなに美味しい晩御飯は初めてだ……。」
それぞれ感想を呟く4人、しかし、作った蓮花は「う〜ん……。」と、腕組をして、いまいち、納得していない様子であった。
たぶん、料理が上手くいかなかったのだろう。
「やっぱり、この料理にするなら味噌汁の出汁は……あれよね……。」
ぶつぶつ呟きながら、蓮花は食べ終わった皿や茶碗を、器用に重ね、台所へと持って行った。
佳恵は「あれでも満足していないのですね……。」と、羨ましそうに蓮花を見つめていたという。
「蓮花は、料理だけ現状に満足せず、ひたすら改善していくらしい……だから、どんどん器用になって、作業に無駄がなくなり、さらにはバリエーションも増えるんだ。」
東牙は、この場に居た女性3人に蓮花が、料理上手の秘密を言う。
さすが、5年間も食べてきたこともあり、説得力はとてもある。
「あれは将来、良い妻になるな……。」
樅霞は、メガネをカチャッと上げて言う。
しかし東牙から「確かに家庭的なんだが……蓮花は、唯一洗濯だけがだめらしい……後、最近知ったんだが、子守りとかも苦手だとさ。」と、メガネをくいっと上げ樅霞に返す。
「うふふ……子守りは、私の得意分野ですわ。」
「あれ?そう考えると私は何もできない……クゥ〜ン……。」
佳恵は、自分にも勝てる場所があるという事に気が付き、一気にご機嫌になる。
そして、楓は自分にそういうスキルが備わっていないと気付き、思わず鳴いてしまった。
「佳恵さんは、子守りが得意なのか?」
東牙は、意外という顔をしながら佳恵に質問をする。
すると「うふふ……。」と、笑い「私はこう見えても兄が2人、弟が1人、妹が3人の、長女として育ったのですわ。だから、子供の相手とかは大好きですわ。」と、言う。
「ほう、ということは、佳恵の家は父、母を合わせて9人家族なのか?」
「そうですわ、お父さんとお母さんは、とても子供が好きで、結婚する前から何人産むかも計画しているくらいです。」
もしかすると、そのDNAが佳恵にも引き継がれたのかもしれない、と東牙は心の中で考えていた。
すると楓は、突然。
「じゃあ、もし佳恵が結婚したら何人、子供欲しい?」
「あら、そうですわね……せめて、家の子供の数より欲しいですわ。」
「それはすごい……お互い、しっかり頑張らないとな。」
つまり、佳恵が望む子供の数は、8人ということかと、また東牙は心の中で呟く。
なお、樅霞の意味深すぎる言葉に、あえて深く考えはしなかったという。
「そういう楓さんは、どうなんでしょうか?」
「えっ……私も3〜4人は欲しいけど、まず相手が限定されるんだよな……。」
確かに楓は獣人だから相手が限られる。
もしかすると、この質問は、地雷かもなと、東牙は懲りずに心の中で呟いていた。
すると佳恵が。
「ちょっと気になったのですけど……楓さんは、絶対に相手が獣人じゃないとだめということは、あるんですか?」
「あ〜……そんなことはない。一応、体のつくりは人間と似ているし、相手が人間でも問題ない……ただ、それだと生まれてくる子がさ……。」
獣人と人間だと、生まれてくる子供は、当然その間のハーフとなり、楓は社会的な意味でそれを恐れている。
だが、やはりここで佳恵は。
「あらあら……そんなことではいけませんわよ?愛があれば、生まれてくる子供も、きちんと社会から守れるでしょう?むしろ、親としてきちんと守ってあげないとだめですわ……。」
なぜか、この言葉を言う佳恵はとても説得力があった。
さすがは、子供のことを大切に思える人だなと心の中で呟き、東牙はその場に立ちあがり、台所まで歩いていった。