複雑・ファジー小説

Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.85 )
日時: 2011/06/27 20:30
名前: コーダ (ID: 3P/76RIf)

「あら?どうしたの?」

 台所で、器用に、そして迅速に皿洗いをする蓮花は、突然、東牙がここに来たのでどうしたのかを尋ねる。
 すると「何、大人の話にちょっとついていけないだけだ……。」と、呟いた。

「ああ〜、そういえばあの3人、よく考えると20歳超えてるもんね。」
「俺もたまに忘れる。」
「そうなの?珍しいわね。」

 2人は、笑いながら会話をしていた。
 やはり、少年少女だと、話が合うみたいである。

「……所で、もし、お前が結婚したら何人子供欲しい?」
「ん?なんで突然、そんな質問を?」
「いや、大人の話で、それが話題になっていてな。」

 東牙は、先程話題になっていた話を蓮花に振ってみた。
 すると「う〜ん……。」と、手を止めながら悩み「相手が、望む限りの数ね。」と、意外な答えが返ってきたという。

「なるほど……。」
「限度はあるけど。」

 東牙は、女性の意見はそれぞれだなと心の中で呟いていた。
 すると「ねぇ、あんたはどうなの?」と、蓮花は逆に質問を返した。

「俺か?そうだな……2〜3人くらいが妥当か?」

 いまいち、ぱっとしなかったが、東牙は悩みながらそう答える。
 すると「ふ〜ん……案外少ないのね。」と、蓮花は少々からかいながら東牙に言う。
 余談だが、この世界の人たちは、平均4〜5人くらいの子供が1家庭に居る。

「何……長い目で見ると、これくらいが丁度良い……いざとなったら大変だろ……。」

 東牙は、突然、顔を下げながら小さくこのセリフを呟いた。
 蓮花は、このちょっとした変化を見逃さず「なんかあったのかしらね……。」と、心の中で呟き黙って皿洗いをして、あまり深く突っ込みはしなかったという。

「生まれてくる子供が、自分の親の顔を知らないなんて、そんな悲しい話は嫌だからな……。」

 東牙の、とても意味深な呟きを最後に、そのまま台所から去っていった。
 蓮花はもちろん、聴き逃さずこのセリフについて分析していた。

「(そういえば、4年前に東牙の両親について聞こうとしたけど、もう他界してるって言われて、その後、どんな親かを聞いた途端、黙ってしまったのよね……あれ……まさか東牙……。)」

 パリン、台所から皿が割れる音が聴こえ「どうした!?」と、樅霞が慌ててこちらにやってきた。
 すると蓮花は「ご、ごめん……ちょっと手を滑らせたみたい……。」と、申し訳なさそうに謝り、割れた皿の撤去を始める。

「そ、そうか……これからは気を付けてくれよ?」

 樅霞はメガネをカチャッと上げ、蓮花に一言言い、居間に戻る。
 割れた皿の回収をしていた蓮花の目は、少々悲しそうに見えた。