複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.90 )
- 日時: 2011/06/28 21:06
- 名前: コーダ (ID: kcbGQI7b)
〜拾目 活動、反省、計画〜
「……お爺ちゃん、子供の近くに居る人って……何?」
小さい子供が、傍にいた50代後半の男性に、不思議そうに質問をしていた……。
この風景は、どこか見たことある場所ね……だけど思い出せない。
そう、私は今、夢を見ていた……東牙の話を聴いては、そのままどこかの部屋で寝てしまったみたい。
「むむぅ……あれは、その子供の使用人だと思ってください。」
「へぇ〜……いつもお世話してくれる人って事?」
えっ?今、何て言ったの?使用人?違う。明らかに、その子供のお母さんでしょ?なんで嘘を教えるの?
「そうですじゃ、これでまた1つ覚えましたな?」
「うん、なるほど……子供には必ず使用人が1人付くか……あっ、でもたまに2人居るよ……。」
違う……それは全く違うわよ!使用人と親が、一緒なわけがないでしょ!?ねぇ!どうして嘘を教えるの!?
「さぁ……帰りましょうか……。」
本当にこれでいいのかしら…子供に嘘を教えて良いのかしら…夢じゃなかったら口出しできるのにできないこの歯がゆさ…。
○
「………………。」
襖をしているのに、朝日が眩しい朝。
だが、蓮花はとても寝起きが悪かったみたいである。
どうやら少し嫌な夢を見たらしい。
「はぁ……なんだろう……。」
頭を悩ませ、すっとその場に立ちあがり、襖を開けて朝日を体に浴びる少女。
すると「どうした?まだ起きるには少し早いぞ?」と、左耳から誰かの声が、聴こえてきた。
寝起きという事だけあって、蓮花はあまり驚かずゆっくりと左へ振り向く、
そこには、樅霞が腕を組みながら立っていたという。たぶん巫女も寝起きだと思うが、寝癖は全くついておらず、少しばかりの風でなびく、長くて、艶やかな黒髪に。蓮花は少しばかり良いなと、思った。
「ちょっと、変な夢にうなされてね……。」
「ほう……まぁ、そういう時もある。」
メガネをカチャッと上げ、軽い口調で言う樅霞。
そして、そのまま真っすぐ前進してきて、蓮花の後ろを横切る。
この時「ねぇ、何するの?」と、少女は巫女に呟く。
「何、毎朝の習慣、箒がけだ。」
「ふ〜ん……じゃあ、私も手伝うわ!」
このまま、2度寝するのはなんか癪だと思い、蓮花は手伝いをすると明るく言った。
突然の言葉に、樅霞は「そ、そうか……。」と、びっくりしすぎて、メガネをずらしたままリアクションをしたという。
○
「んっ……う〜ん……おはようございます楓さん……って、あら?」
別の部屋では、佳恵がゆっくりと起き上がっていた。
寝起きと言う事もあり、着ていた和服は、少々乱れており、胸の谷間がとても見えていた。
一畳隣には、楓が丸まって寝ており、起きる気配は全くなかったという。
すると佳恵は「ふふ……。」と、怪しく頬笑み「わたくしの目覚まし時計は、少々荒いですわよ。」と、呟き、寝ていた楓の尻尾を思いっきり握った。
「キャン!し、尻尾だけはやめて—!」
神社には、犬など決して居ないはずなのに、なぜか犬の鳴き声が響き渡った。
楓は、バッと起きあがり、佳恵を見て涙目で、こんなことを言った。
「うふふ、さて、早く皆さんの所に行きましょう。」
佳恵は、やってやったと言わんばかりの表情で、部屋から出て行こうとする。
「その前に、自分の姿を見た方がいいと思うけどな……。」
楓がそのセリフを言った瞬間、佳恵はピタッと立ち止まり「あらあら……このまま出たら、出血サービスでしたわ。」と、呟き、着ていた和服を整え始めた。
「(佳恵はもしかして、相手が困る姿を観察するのが好きなのか?)」
楓はこれから、佳恵が居る時は、尻尾に警戒すると軽く誓ったという。
○
「よし。箒がけは、これで終わりだ。」
「あら?ずいぶん、あっさり終わらせるのね。」
樅霞は、ささっと軽く、神社の前を掃いただけで、終了宣言をする。
これを見て蓮花は「この人、最低限のことしかやらなさそう……。」と、心の中で思っていたという。
「何……しばらくここに帰ってこれなくなるからな。」
巫女の意味深な一言に、少女はポカンとしていた。
しばらく、帰ってこれないというのは一体、なんなのだろうか。
