複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.94 )
- 日時: 2011/06/29 07:09
- 名前: コーダ (ID: lAbz4I/2)
「あれ?そんな所で、どうしたんだ東牙?」
「ん?佳恵さんと楓か……何、少し、月刀を振っているだけだ。」
佳恵と楓が、何気なく縁側を歩いていると、庭で、東牙が刀を振っていたという。
「うふふ……なら、わたくしも少し、雪刀を振ってみようかしら?」
「むっ、なら私も花刀を振ろう。」
佳恵が、庭に足を運ぶと、楓もつられ庭へ来る。
そして、雪刀と花刀を鞘から抜き、思いっきり1回だけ振った。
「ほう……雪刀と花刀の作りも、なかなか特徴的だな。」
東牙は、2人の刀を見比べ、こんな言葉を呟く。
すると「確かに長さがそれぞれ違いますわね……。」と、佳恵が呟いた。
「私の花刀が1番長くて、その次に東牙の月刀、佳恵の雪刀が1番短いな……。」
佳恵の雪刀は1m20cm、東牙の月刀は1m30cm、楓の花刀は1m40cmと、だいたい10cmずつ長くなっていたという。
「もしかすると、切れ味も違うのか?」
「それはどうでしょうか……。」
東牙の疑問に、佳恵は「う〜ん……。」と、いった感じで呟く。
すると楓が「なら、実際に使ってみればいいじゃないか!」と、犬歯を出して2人に言う。
この言葉に東牙は「なるほど、単純だが、それが1番わかりやすい……。」と、楓の意見を聴いた途端、月刀を目の前に居る楓に振る。
ガキン、刀と刀がぶつかり合う音が周りに響き、林に居る鳥が一斉に逃げ出した。
「ちょっと、いきなりすぎないか東牙?」
「不意を突かれたほうが緊張するだろ?」
キン、東牙は刀を思いっきり押して、そのまま作用反作用の法則で後ろへ下がる。
楓も、態勢を立て直し、両手で刀を持ち、目の前にいる東牙を獣のような目で直視する。
「やはり、楓はその目が似合っているな。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。私は、戦闘になると少々本性を出してしまうのでな……。」
楓は、グッと足に力を入れ、そのまま東牙の懐まで走る。
獣人の瞬発力で、一気に距離を縮められる東牙。
ガキン、だが、冷静に楓の刀を受け止める。しかし、受け止めた時の衝撃が激しく、東牙は少し険しい表情をする。
「くっ……。」
獣人の押しの強さに、どんどん負ける東牙。
「押しの強さなら、人間には負けないぞ……。」
楓は、刀を押しながら言う。
すると、東牙は突然、地面に背中から倒れる。
この瞬間、刀と刀が触れ合っていない時間が発生し、楓は思いっきり前へすっ転んだという。
佳恵は「あら……。」と、なかなか面白い対処の仕方に言葉を口からこぼしてしまう。
「目の前の壁を、思いっきり押すと前へ力は入る……だが、突然、壁がなくなってしまうと、体が前へ行くのは当然……それを上手い具合いに利用すれば、こういうこともできる……。」
くいっと、東牙はメガネを上げながら倒れている楓にそう言う。
「うっ……さ、さすがは東牙だ……。」
楓は、着物に着いた汚れをほろいながらそう言う。
そして、花刀を思いっきりぎゅっと握り、また東牙の懐まで走る。
しかし東牙は、慌てず月刀を鞘に戻し、腰を低くして何かの構えに入った。
ガキン、刀と刀が触れ合う音が聴こえた時には、2人の刀は、なぜか宙を舞ってそのまま地面に突き刺さっていた。
どうやら、東牙の居合抜きと、楓の一閃がぶつかった時の衝撃が激しく、思わず手を離してしまったらしい。
2人は急いで、自分の刀を取りに行き、すぐさま態勢を立て直したが、観戦していた佳恵は「両者、引き分けですわ。」と、ニッコリを笑いながら東牙と楓に言った。