複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.96 )
- 日時: 2011/06/28 23:07
- 名前: コーダ (ID: kcbGQI7b)
「気が付いたらリーグ戦になっているな……。」
「あらあら、良いじゃないですか、朝はこれくらい動かないとだめですわ。」
彼女の言っている事は、常人には理解しがたいと思う。
「なんだかんだいって、俺と佳恵さんが手合わせするのは、初めてだよな?」
「そうでしたわね。あの頃はそんな暇もありませんでしたし……よろしくお願いします。」
佳恵の挨拶に「よろしく……。」と、呟いた瞬間、お互い刀を構え一気に空気は手合わせモードに入る。
楓は、突然すぎる切り替えに、少々戸惑っていた。
両者、ピクリとも動かずに、お互いの様子を見ていた。
朝の心地よい風の音が、響き渡る庭の中で、楓は生唾をごくりと飲んで、なぜか見ているだけなのに自分もかなり緊張をしていた。
そして東牙が「こちらから行かさせてもらう……。」と、佳恵の懐めがけ足を動かす。
佳恵は、特に動かず目を閉じて、刀を構えて東牙が来るのを待つ。
————————————————————————ガキン。
雪刀と月刀がぶつかり合う音が響き渡り、風の音が一気に消える、
しかし、これでは先程の二の舞になると思った東牙は、すぐにあの法則で後ろに下がり態勢を立て直した。
「東牙は、作用反作用の力を使うのですね……。」
「俺の刀は論理的なんでな……。」
東牙は刀を使っている時に、頭も使っている事を知り、佳恵は少々尊敬する。
そして次は、佳恵が東牙の懐めがけ動いてきた。
「その無駄のない動きが、俺には無いとこだな……さすがは佳恵さん。」
東牙はこんな状況でも、佳恵の刀捌きをじっくり見ていた。
そして、またガキンと刀がぶつかり合う。
「(すごい……この2人の手合わせはレベルが高い……。)」
楓は、2人の手合わせを見て、とても興奮していた。
元四天王が、ここまで唸らせる手合わせを、平然とする東牙と佳恵はすごい。
「どうする佳恵さん?このまま楓の時と同じように受け流すか?」
「うふふ……それをさせないために、刀に力を入れているのはなぜでしょうか?」
お互いの刀を押し合いながら、こんな会話をしている2人。
東牙は、佳恵の受け流しを警戒して相手の刀を自分の刀で固定する。
これでは日が暮れると思った佳恵は、慣れないあの法則を使って、後ろに下がり態勢を立て直す。
すると東牙は「論理的な刀捌き……。」と、少々意味不明な言葉を呟き、そのまま佳恵の懐まで向かった。
「まだ私はやられませんわ……。」
「科門奥義第七目『遠刀斬(えんとうざん)』…!」
東牙は、佳恵の懐に向かいながら刀を思いっきり回し、1周した途端、ガキンとぶつける。
想像もできないくらいの強い衝撃に、佳恵の雪刀は、そのまま横へ3mくらい跳ばされたという。
この瞬間、佳恵は東牙に負け「ありがとうございました……。」と、一礼して雪刀を取りに行った。
「ちょっとした遠心力を使えば、刀の威力は上がる…あの時、九寺に使った奥義も……これだ。」
月刀を鞘に戻し小さく呟く東牙。
あの時、九寺の刀を折るほどの奥義は、遠心力を使った一閃。だが、 ここでおかしな点が発生する。
なぜ、佳恵の雪刀を折れずに跳ばされただけなのかということ。
この答えの候補として、ただ東牙が手加減をしたか、雪刀がとても丈夫という2つが挙げられる。
しかし、今はその答えを明確に答えることはできなかったという。
「所で……目的は果たせたのか?」
「………………。」
「さぁ……どうでしょうか?」
楓は、ふとこの手合わせの目的が達成されたのかを、2人に聞く。
だが、この反応だと目的を忘れていたと思われる。
すると3人はいきなり声を出して笑い始めた。
目的を考えずに、普通に手合わせをやって、何も収穫が無かったことに対しての笑いがしばらく神社の境内で。