複雑・ファジー小説
- Re: 復讐 5年の歳月を経て…… ( No.97 )
- 日時: 2011/06/29 20:44
- 名前: コーダ (ID: rGbn2kVL)
「さぁ、そろそろ城下町に戻りましょう。」
3人が手合わせを終えて、居間に行くと、テーブルには、蓮花と樅霞が一緒に作った朝食があった。
それを、5人で雑談しながら食べ終え、20分くらい経った頃に、佳恵がふと皆に言った。
「そうだな、城の方はまだ片付いていないし……早めに作戦を立てないと……。」
「1泊世話になった……。」
東牙が、隣に居た樅霞にそういうと、なぜかメガネをカチャッと上げ「世話になった?まだ世話になるの、間違いではないか?」と、呟いた。
「どういう事だ……?」
「ふふ、私は今日から長男坊、次男坊、三男坊の監視と言う意味で、お前たちについていくことになる。」
樅霞の言葉に、4人はとても驚いた。
だが、当然と言えば当然である。
柊の巫女は、刀を守っていくために居るのだから。
「しばらく帰ってこれないって、そういう意味だったの!?」
「そうだ。無事に、3本の刀が神社に戻るまで、ついていくぞ?」
もちろん樅霞は、半端な気持ちでそんなことは言っていない。
だが東牙は、確認の意味で「俺達についていくというのは、いざこざに巻き込まれるんだぞ?」と、樅霞に一言言う。
すると目を吊り上げ「そんなもの、百も承知済みだ。」と、迷いのない答えが返ってきた。
「そうか……そこまで言うなら、俺は何も言わん……皆はどうだ?」
「あんたがそう言うなら、私はそれに黙って納得するだけよ。」
「お色気巫女さんが増えて良いですわ。」
「私も構わない。」
皆の同意を受けた樅霞は「済まない。」と、一言呟き、そのまま襖を開けて、どこかに行ってしまった。
「また部屋を借りないとな……。」
「ならいっそのことあの宿屋、私たち専用にしない?」
「あら、それは良いですわね。」
「ふむ、自由に使えるから良いな。」
宿屋の部屋を心配する東牙に、女性陣のとんでもない発言に「おいおい……。」と、心の中で呟いたのは言うまでもない。
○
「所で、行く前におみくじでも引かないか?」
鳥居と賽銭箱の間くらいの道で、ウロウロしていた時、突然樅霞が、大量の紙を用意して神社っぽくおみくじを勧めてきた。
すると楓は、何も言わず紙を1枚取り「11番だ。」と、樅霞に言った。
「11番は……なるほど末吉か。」
「なんか微妙だな……。」
楓が引き終わると東牙、蓮花、佳恵はつられて1枚紙を取り「24番……。」「8番ね。」「16番ですわ。」と、一気に樅霞へ言った。
「24番は吉、8番は中吉、16番は小吉だ……なんだ、誰も大吉は居ないのか?」
メガネをカチャッと上げて、面白くないなと言った表情をする樅霞。
するとなぜか、自分もおみくじを引いて「29番か……。」と呟き「なるほど、凶か……。」と、紙をじっくり睨んだ。
「巫女が凶を引くって大丈夫なのか……。」
「そもそも大吉、入っているのかしら?」
楓と蓮花が、樅霞に突っ込みをすると「ううむ……。」と、眉間にしわを寄せて、おみくじを既定の位置に戻す。
そして「別に、運勢が全てではない、最終的には自分だしな……。」と、巫女らしからぬ言葉と、負け惜しみを4人に聴こえるように言った。
これには思わず4人は「本当に巫女か?」と、一瞬疑ったらしい。
「神社には結界も張ったし、これで誰も入れない……さて、行こうか。」
なぜか、樅霞の合図で神社を後にする一向。
行きより、帰りの方が人数の多いことに今は誰も突っ込みはしなかった。
余談だが、東牙はだめもとで宿屋の人に「貸し切りにしてくれませんか?」と、頼んでみると意外にあっさりと承諾を得られたという。