複雑・ファジー小説

Re: 【オリキャラ大合戦】ヒューマノイド。 【参照七百感謝】 ( No.171 )
日時: 2011/07/19 19:15
名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: LMPzgpkP)


 ——誰だ。
 ライはさっとユーリカを見た。出血した後も、苦痛にゆがむ顔も無い。ユーリカじゃない。
 だとしたら—————……ティアか!?
 すばやく振り返る。





 フェーレイ、か。

 ライは心臓部分を拳銃で射抜かれたフェーレイの姿を確認して、ほっと息を吐いた。ティアの手に握られた、ライの拳銃が煙を吐き出している。
 ——成程。俺達が戦っている間にティアを連れ去ろうとしたフェーレイを、ティアが撃った、と。

「ユーリカ、俺はフェーレイを。お前は朧を、宜しく」
「はい」

 ライはユーリカに告げると、腹を射抜かれてうずくまるフェーレイの元へ跳ぶように移動した。フェーレイが抱えていたティアが滑り落ちる。

「おっと」

 ティアの身体が地面に落ちる前に、ライが受け止め、そっと床に寝かせた。
 ティアの頬には、まだ涙が伝った跡がある。

「く……くそ……ぉ」

 ——また、だ。また、見えた。
 ライは、しゃがんで腹を抑えてうずくまったまま、嘆くフェーレイの髪の毛をぐっと掴み、無理やり自分の顔に目線が合うようにした。

「……お前が望むのは、何だ」

「…まだ……な、にか……用があるんです、か?」

 途切れ途切れの言葉。言葉を吐くたびに、口と腹から流れる紅い、血。血はどくどくと流れ、絶えなかった。

 ライは、目に映ったフェーレイの姿を確かめる。

 泣き叫ぶ幼い男の子。
 その男の子と顔が良く似た、男の子。
 片方が、中学生くらいの青年に抱えられている。
 二人の子供から滴る涙。

 血。



「兄弟愛か?……お前、兄弟いたろ。兄弟が殺されて、お前は連れて行かれたんだな」
「……何故、そう言えるのです……」

 ライは掴んだ髪の毛を静かに離した。

「見えた。でも、もう手遅れか」

 フェーレイは、一度目を大きく見開くと、直ぐに細めた。



 笑った。



「そうみたい、ですね。……貴方に、この気持ち、分かりますか?……私は……」



 泣いた。



 血と涙と笑顔が混ざり合って、頂点に達した。頂点から一気に地獄まで滑り落ちるところを、ライは表情を変えずに見つめていた。

 笑顔のまま、涙を流したまま、血を流したまま、息絶えたフェーレイにライは小さな声で話しかけた。

「当たり前だろ?」

 その言葉に、どんな意味がこもっているのか、ライは自分でも分からなかった。