複雑・ファジー小説
- Re: 【参照千突破】 ヒューマノイド。 【気変わり再開】 ( No.220 )
- 日時: 2011/11/05 22:46
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: AidydSdZ)
- 参照: 何で記事編集しようとして削除しちゃうかね俺は。
3.last days
「ねぇ、やっぱり一人じゃまずかったんじゃないかな」
暗い嫌な空気の漂う、ヒューマノイドルーム。今頃、ボスの部屋で戦闘を始めたであろうライのことを、皆が考えていた。
彼女、レイの声は透き通って、どこまでも伸びていく綺麗な声なのだが、今日は何故かトーンが低い。
「そうですね……。私がついていけばよかったですね」
サイファーが、心底後悔した様子で呟いた。また、重い沈黙が戻ってくる。
——何故、彼は私たちを置いて行ったのか?
彼には、見えていたのかもしれない。
「やっぱり、溜まってるな。ったく、排除人は何してんだかなぁ……」
後方で聞こえた男の声に、一番早く反応したのは海渡だった。
「誰だ!?」
海渡が出した大きな声に、皆が振り向く。皆の視線の先には、海賊のような格好をした男の姿があった。
男はさぞ愉快そうに、ヒューマノイド達を見まわす。
「ユーリカのアンドロイドが追加されたからな、裏切ったのかと思って」
男はニコニコと笑いながら、ユーリカを見つめた。
ひるむユーリカをかばう様に、海渡が立ち上がってユーリカの前に立った。
「誰だ、お前!」
男はニコニコと笑うのをやめて、今度は海渡を睨んだ。
海渡の額から、汗が流れる。
「我が名はロイ。このビルの支配者である!」
その男、ロイは高らかに笑った。
支配者。つまり、ヒューマノイドもアンドロイドも管理している者。到底、管理されている側に勝ち目は無いだろう。
誰一人として、声が出せない。ボスという存在は知っていたが、実際に見た者はこの中には居ない。どんな戦法を使ってくるか、どんな武器を持っているのかは分からない。
闇の中では、やはり目が慣れるまで待つしかないだろう。
だが、此処で待てば今戦っているであろうライやティアが死ぬかも知れない。
どうすればいい?
慣れるのを待たずに、足掻くしかないか。
彼女、サイファーは数秒の自問自答で出した答えを信じた。
「私達を排除しに着たんですか」
「ああ、排除人が仕事を放棄したからな」
支配者、ロイは目の淵でサイファーを睨みながら、口元をさらに釣り上げた。サイファーの目が細くなる。
「一つ」
彼女が、フレイルを握りなおして、左手の人差し指を立てた。その指をそのまま後ろに返し、人差し指と中指を変えた。
「ファッキュー。帰って下さい」
「洒落たこと、するんだな」
ロイは自分の方へ走ってくるサイファーの姿を片目に捕らえながら呟いた。
ガッ。
フレイルの先端がロイの居た場所に当たる。ロイは既に其処には居なかった。
——早いですね、流石とでも言うべきでしょうか。
サイファーは目の淵ぎりぎりで後方の仲間を捕らえた。皆、しゃがみこんだり座り込んだりして、下を向いて歯を食いしばっている。サイファーは舌打ちをして、怒鳴り散らした。
「何をしてるんですか、戦うんですよ!」
サイファーの大きな声が部屋の中に反響して、長い時間空を彷徨っていた。力尽きた声が静かに消えた時、一人の女が立ち上がった。
「……此処で死んだらきっと、この世に未練いっぱいだね……」
彼女は、呟くように言った。
レイだった。