複雑・ファジー小説
- Re: 俺様の勇者伝説 第二話 俺の名前 ( No.5 )
- 日時: 2011/06/18 11:44
- 名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)
ある小屋の前に、まきわりをしている茶髪の男子がいた。
「あー疲れた。ほんと疲れた。もうやだ死ぬ。
俺死んじゃう。クルアー!おいクソ爺!俺疲れたからぁ!
もう無理だからぁ!」
まだ変声期を迎えていないソプラノボイスが響き渡る。
「だぁれがクソ爺かぁ!まきわりくらいできるようになれ!」
クソ爺呼ばわれされたそれは、漆黒の目と髪のクルアだった。
だが、あの頃とは違って無精髭も生えている。
「あと、千本とか馬鹿みたいな数、一日でできるかよ!」
「俺はできる!」
「クルアの馬鹿力と一緒にすんな!」
クルアは、はぁ・・・とため息をつくと、
「まきわりはいいから、中に入れ。今日の健康チェックする。」
と言った。
すると茶髪の男子は苦い顔をし、こう言った。
「ほげぇ、またやんのかよ。」
嫌な顔をするものの、小屋の中へ入っていった。
「そういや、クルア。」
「なんだ?」
クルアは、傷だらけの身体を見ながら応えた。
「俺の名前って、なんだっけ。」
「またか。」
クルアは変な顔をしながら、茶髪の男子に服を着せる。
「まただよ。変な夢を見るんだよ。
皆が俺のことをいろんな名前で呼ぶんだ。
そしたらなんか名前忘れた。」
無表情な顔で茶髪の男子が言う。
彼の夢はいつもだれかが自分を呼ぶのだ。
それも、いろいろな名前で。
聞いた事もない名前なのに、それぞれ全てに応えてしまう。
これが自分の名前、こっちも自分の名前、と。
「何回目だと思ってんだよ。お前の名前は、
メリルだよ。」
「あー・・・思い出した。」
「そうか。」
「・・・寝る。」
「おやすみ。」
「即答かよ。」
クルアに突っ込みながら、メリルは小屋の梯子を上っていき、
クルア特製のベッドにダイブした。
「あー気持ちいい・・・。」
メリルは幸せそうな顔をして、その重くなった瞼を閉じた。
「あぁ・・・ありがとう。生まれてきてくれて・・・。」
優しい声が聞こえた気がした。
「ふぁ・・・。よく寝た・・・。」
外はもう暗くなり、夕食の時間となった。
「・・・寝すぎたか?」
健康チェック時は午後1時。今は7時くらいだ。
少しばかり寝すぎたと反省し、梯子を降りていく。
「クルアー飯ー。」
「できてるぞ。寝すぎなんだよ、お前は。名前覚えてるか?」
「お前ほどボケは酷くない。」
「失礼だな!」
その日は平和に終わった。
そう、その日までは・・・。
第二話 完