複雑・ファジー小説

Re: 俺様の勇者伝説 第五話 ここどこよ?  ( No.11 )
日時: 2011/06/18 19:33
名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)

「う・・・。」
メリルは目を覚ました。
重い瞼をなんとか開けると、そこはまったく見慣れない場所。
そこに寝ているだけでわかるその上質な毛布は、
どこかで包まれた覚えがある。
だが思い出そうとしても思い出せないので、メリルはとりあえず何故ここにいるのかを考えることにした。

「俺なにしてたっけ・・・?」
ふわふわとしたベッドに座りながら、かれこれもう十分はたとうとしている。
これだけ考えても思い出せないとは、十二歳にしてもうボケたかと、
メリルは自分を嫌悪しながらまた考える。

「あーダメ。思い出せない。ここの家主でてこないかなー。」
何かしてくれたか、あるいは迷惑をかけたのなら、まず誤りたいというのが今の気持ちだ。

トントン
ドアを叩く音がした。

「失礼します。もう起きていますか?」
まったく知らない声に警戒しながらもメリルは、
「・・・起きてる。」
と、いかにも不機嫌な声を発した。
だが、ここの家主だとしたら少し失礼だったかもしれない、と
メリルは少し反省した。

「大丈夫ですか?傷だらけでしたので、勝手ですが手当てさせて
いただきました。」
「・・・。」
(自分が傷だらけだった?それよりも、こいつは身分も知らない奴を
無防備にも助けたりするのか?アホだろ。なんか顔もおっとりしてて
妙なやつだな・・・。)

メリルは感謝の言葉を言うよりも、助けてくれた者を気味悪がった。
(つーか誰?)
「もしかして、まだどこか痛いですか?」
「・・・いや、いたくねーけど・・・。
あんた、誰?」
「あぁ・・・名乗っていませんでしたね。私はライヒと申します。」
ライヒと名乗った男性は、メリルより十以上は年上で、髪の色は
濃い紫、瞳の色は黒というメリルの村人と同じような色だった。
身長はさほど高くはないが低くはないといった感じで、顔は無表情。
服装も、悪くは無い。

「・・・俺はメリル。」
向こうが名乗ったのだから、こちらも名乗らなければ、と本能的に
思ったメリルは自分を名乗る。
が。
「メリルですか。女性のような名ですね。」
「お前ムカつくな!初対面の人間に!」
「そうですか。それより動いても大丈夫という事は、少しは元気に
なられたんですね。」
「・・・。」
意図されたように返され、メリルは何も応えなくなった。
「まだ傷は癒えたばかりですので、そこらじゅう歩き回らないで
ください。
明日になったら、また来ますので。その時いろいろ説明します。」
それでは。と、後ろを向いたライヒがコツコツとドアの前までいく。

「おい!」
ドアの前まで行き、もう去ろうとしていたライヒを、メリルは
ひきとめて、
「なんかしらねえけど、ありがとな。」
と言った。
ライヒは無言で部屋を出て行った。

「面白い子ですね・・・。」
ライヒは部屋にでてから呟いた。

第五話 完