複雑・ファジー小説

Re: 俺様の勇者伝説 第十五話 やばい ( No.95 )
日時: 2011/06/29 05:44
名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)


「おいゼロ。」
「なんじゃ?」
あるところに、銀髪の女性と茶髪の男子が森の中に居た。
「ここ、どこ?」
「しらん。」

つーか迷っていた。

「モンスター退治じゃねぇよ。モンスターでねぇよ。
つーか迷ってるんじゃねーか。」
眉間に皺を寄せ、ゼロに向かって言い捨てる。
そのゼロはというと、どこを見渡しても木ばかりのところを指差し、
「ふむ、こっちを左に行くと何かがある気がする。」
と言った。
「おいまてゴラァ。」
こいつ、方向音痴か・・・!と思いながら、メリルはゼロの服の袖を引っ張った。

「待ってくれ、俺じゃゼロに追いつかない・・・。」

子供の特権を使った。

子供の特権とは、子供にしか使えない、子供による精神ダメージを与えるものだ。
これを使われた者は、しばらくは「俺はなんてことを・・・!」と思い、子供を抱きしめる。無論、子供はニヤついている。

子供の特権を使った上に、上目遣いも使った。

ゼロはキュンとした。

メリルは悪魔の微笑みを浮かべた。

「わ、私について来れないのなら、おぶさるのが良いの!私なら大丈夫じゃ!さぁ!」
メリルは、さすがにこの年で(まだ12歳のはずだが)おんぶはアレかと思ったが、本人が良いと言ってるしいっかぁとゼロにおぶされた。

「さぁ、ゆくぞ!」

でも方向音痴。

メリルをおぶりながら、道を外し走り抜ける。

メリルは「しまった・・・!」と思った。

「で?何。森を走ってたら砂漠に着くのか?」
「す、すまぬ・・・。」

メリル一行は砂漠に着いた。

「おかしいだろ。どう考えてもおかしいだろ。どうして森から砂漠になるんだ。」
「そ、そうじゃな・・・一本道だったはずじゃが・・・。」
ゼロが大量の汗をながしながら、そっぽを向く。
「あーあ。どうやって森に戻ろう・・・。」
メリルが呟いた瞬間、剣が抜かれた。

ジャキンッ

メリルは細い白刃を弾きかえす。

「なんのつもりだ?


ゼロ。」

「私にも、金事情があってのぉ・・・。すまぬが死んでくれ。」
ゼロは笑った。

そして、メリルを斬りつけた・・・


はずだった。


「な、なぜ生きておるのじゃ・・・!」
メリルは子供に似合わぬ笑顔をすると、こう言った。
「自分の腹を見てみろよ。」

ゼロの腹は赤に染まり、大量の水を被ったようにしたたっている。

「は?」

「さよなら。・・・レイ。」

「なぜ、その名を・・・!」

「あんたがゼロじゃない事は知っているんだ。」

「・・・そうか。」

レイと呼ばれた女は、フッ・・・と笑い、その場に倒れた。

「なんか後味わりぃー・・・。」
メリルは己の勘を頼りに森へ戻る。
女の死体のことは忘れ、本当のゼロを探しに。

「レイとゼロって、どっちも0じゃん・・・。」

メリルは、最後に本当にどうでもいいことを言って、ようやく見つけた森を走っていった。


第十五話 完