複雑・ファジー小説

俺様の勇者伝説 第三十二話 今日からお前を護らしてくれ ( No.148 )
日時: 2011/07/16 08:29
名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)


「意味わかんねぇ。」

メリルがライシェルを見ながら言った。
「お前馬鹿?見ず知らずの人間にいきなり「護らしてくれ」なんて言われたらどーよ?うわコイツ変だって思うだろ?
つーわけで、お断りさせていただきます。」
メリルが頭を少し下げて、元の場所に戻ろうとすると、ライシェルが言った。
「お前は、禁忌の子だ。」
「・・・何を知ってんだ?」
「禁忌の子の特徴は茶の髪だ。普通の人間はそこまでしか知らない。
実はもう一つ特徴がある。」
メリルは黙って聞いていた。
ライシェルが続ける。

「身体のどこかに、黒くて禍々しい印がある・・・。」

「その印がどうしたんだよ。」
メリルは若干殺気立たせながら言った。
ライシェルは冷静に言った。

「お前のそれは、生物の邪気を引き寄せる。
もちろん、モンスターも。人間もだ。
・・・お前、家が襲われたりしていないか?」

メリルははっとした。
家が襲われたことは一度あった。
その際、クルアもいなくなり、家の中は荒らされ、だがメリルだけ無事だった忌々しい記憶。

その後のクルアが死んだという知らせ。

メリルは何も答えずに、下唇をかんで顔を俯かせた。
「・・・お前の仲間は?まさか一人で来たのか?」
「・・・せ・・・。」
「どうした。」
「うるせぇ・・・!」
「!!」

ワォォォォォォオオオオオン!!

まだ正午。

犬や狼が鳴いている。
木々は風に激しく揺られている。

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ」

メリルが言うと、モンスターが集まってくる。

ライシェルは予想していたかのように、あたりまえかのように、
モンスターを次々と倒していく。
その量は減っていき、メリルも何も言わなくなってきた。

「・・・・・・・・・。」

バタンッ

糸が切れたように、メリルは倒れた。
それと同時に、ライシェルはモンスターを全て倒した。
「・・・どうするか・・・。」


ライシェルは小一時間悩んだ。


「うぅ・・・。」
メリルが起きた頃にはもう夜中だった。
周りを見渡すと、木、木、木、ゼロ、シャドウ、木、ライシェル・・・。
「全部木じゃねぇのかよ!」
「開口一番変な奴じゃのぅ。」
「そしていきなりいなくなっているのになぁ。」
「「謝るとかしねぇのか?おい。」」
ゼロとシャドウが珍しくニコニコしながら言った。
「え、あ・・・ご、ごめん・・・。」
メリルはたどたどしくも謝った。
「つーかコイツ・・・。」
コイツ、とはライシェルのことである。
「メリル、今日から私は共に行動する。よろしくたのむな。」
「却下。」
「却下されても勝手に一緒に歩くから問題ない。」


パーティが一人増えた。


第三十二話 完