複雑・ファジー小説
- 俺様の勇者伝説 第三十三話 帰れ・・・やっぱ行くな ( No.156 )
- 日時: 2011/07/16 16:50
- 名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)
「帰れ。」
メリルが腕を組みながら言う。
ライシェルは正座している。
「いやだ。」
断固として拒否する、という決心をいやだという一言に込めた言い方だ。
「帰れ。」
「いやだ。」
「帰れ。」
「いやだ。」
「帰れ。」
「いやだ。」
「帰れ。」
「いやだ。」
もう一時間も、このやり取りが続いていた。
痺れを切らして、ゼロが叫ぶ。
「お前らはなしている暇があるのだったら早く身支度をするのじゃ!
今日こそは森から脱出するのではなかったのか!」
「「のーせんきゅうー!!」」
よくわからん英語二人同時に叫んだ。
「なぜ英語なんじゃぁ!というかそれ英語か!?」
するとシャドウが二人に向かって歩いてきた。
ドゴッ
メリルの腹を殴って気絶したメリルを担いだ。
「これでいいだろう。」
「ああ、助かったぞシャドウ。」
「では行こう。私は身支度が出来ている。」
「メリルのもできたのじゃ!」
「ならば行こう。」
3人は主人公を差し置いて森の中を歩いていった。
歩きながら、ゼロはライシェルに聞く。
「なぜ、ついてこようと思ったのじゃ?メリルとはあった事がないんじゃろう?」
「・・・禁忌の子は、聞いたことがあった。
知っているか?恐らくゼロは知っているか・・・その国の人間だったかもしれん。ある女王に仕えていた女の話を。
女王は暴君だったが、可愛らしく、根は優しい者だった。
女はその女王の、召使のような者といえばいいか。
いつも平和だった。
だが、ある日・・・。」
ライシェルは心苦しそうに言う。
「ある日、私に殺して欲しい者がいると。それは、隣国にいる禁忌の子。女王は禁忌の子の噂を聞き、恐ろしくなって殺しの命令をした。
女は、その国の者に頼んで禁忌の子を殺してもらった。
そう、やったはずなんだ・・・!!!」
ゼロがライシェルを見る。
「・・・それは、主の話ではないんじゃろう?
なぜ、主が泣く?」
「これは・・・この話は・・・ふふっ・・・。
全て私の話だ。私は女王から命を受け、メリルを殺せという命を実行したんだ。
すると、メリルは殺されず、その保護者とその国のものが死んでいた。」
ライシェルは微笑みながら歩き続ける。
そして、また続けた。
「その後よく考えた。
禁忌の子といえど、人だ。人の命を奪うのは、人として生きることではない。
だから、私は女王から逃げ出し、メリルを護ってやろうと思った。
いままで、ずっとメリルを追いかけていて・・・いや、今のはなんでもない。私の戯言だ。」
するといままで黙っていたシャドウが口を開いた。
「それが、お前の理由か。」
「そうだ。」
「だったら、さっさとメリルに認められることだ。」
「そうじゃぞ。コイツは頑固じゃからな。
でも・・・もう認めているのかも知れぬな。なぁ、メリル?」
シャドウの肩に乗っていたメリルがビクッと揺れた。
「ん?起きていたのか。」
「最初から聞いていたんじゃろう?」
「なっ!!」
ライシェルが顔を真っ赤にしながら口をパクパクしている。
「・・・別に。」
「なんじゃ、そっけないのぅ。それより、ライシェルのことじゃが・・・。」
「好きにすればいい。」
メリルは、シャドウの肩に乗り、顔をあげずに言った。
「・・・もう言わない。」
「ならば、ついていくことにするか。もう身支度してあるしな。」
ライシェルが無表情に言った。
「お前女だろ。笑えよ。ゼロを見習え。かわいくねーの。」
「失礼な餓鬼だな。」
第三十三話 完