複雑・ファジー小説

俺様の勇者伝説 第四十七話 性別不明 ( No.274 )
日時: 2011/08/04 09:12
名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)


[・・・・・・どこか、いたい?]
白い髪に白いマントのようなものを着ている青年は、なぜかカンペを持っていた。
カンペで話す彼の顔は、ほとんど前髪で見えない。
無表情な彼はこてんっと、顔を斜めに動かして、また言った。
[・・・・・・どこか、いたい?]

ライヒとメリルにはこの青年が誰かなど、知る由も無かった。

だって———、

[・・・・・・おれはもう、しんでいるんダ。]

「は?」
メリルはわけがわからなくなって聞き返す。
ライヒも顔が強張っている。
[・・・・・・おれはもう、しんでいる。だから、トモダチがホシイ。
・・・・・・トモダチに、なれ。]
青年はカンペでそう言うと、口元しか見えない顔をまたこてんっと動かした。

[・・・・・・ちゃいろのかみのけはあったかい。トモダチになれ。
むらさきのかみのけはあんしんする。トモダチになれ。]
青年はそう言うと、メリルとライヒの縛っていた縄を切った。
[・・・・・・これでトモダチ。]
青年の口元が若干弧をえがいた。
「ふざけんな。」
メリルが青年を睨みつける。
青年は驚きもせず、メリルを見る。
「だったら、なんで最初俺らを縛り付けた?
逃げられたくないからか?」
[・・・・・・にげられたら、トモダチできない。]
「違いますね。」
ライヒが言う。
青年はまだ驚きを示さない。
「友達とは、そのようなものではありません。
・・・友達とは、互いに心を許しあっている人。」
「普通友達になろうとするときに友達縛るか?
どんなSMプレイだよ。・・・とにかく、そんな一方的なのゆるさネェ。」
メリルとライヒがそう言うと、青年はカンペを捨てて、自らの声で言う。

「・・・ゆるさない。」

だがそれはとても悲しく、なにより———。
「モンスターの声に似ている・・・!?」
メリルが呟いた。
青年がマントを取ると、そこにはメリルは見慣れたもの。
「モンスターの腕が人体についている!?なんで・・・!」
ライヒがそう言うと、青年は言った。

「わるいひとがじっけんしたっ!おれのからだをじっけん!
いたい、いたい、いたいいたいいたい!
このからだで、トモダチできないっ!なら・・・むりやりっ!!」

青年はそう言うと、メリルに襲い掛かる。
メリルは剣で応戦しようとしたが・・・。
「あぁ!?ねぇ!?なんで!?・・・川にあるんじゃん!やべぇ、ゼロに怒られる!!」
「まったくもう・・・。私の拳銃かしますんで、私を守って戦ってください。」
ライヒはそういうと、後ろに下がって「がんばってくださいねー」と言っている。

「ライヒッ!お前戦かわねーのかよ!!」
メリルが拳銃で撃ちながらライヒに向かって叫ぶ。
「私がいったら即ゲームオーバーでコンティニューですよ。」

「よそみっ!」

青年はメリルの腹にパンチを食らわせる。
メリルも拳銃を撃つが、青年はひらりと避ける。
「おそい。・・・おまえらコロスッ!!!!」

















薄暗い部屋で、血しぶきがあがる。

















「ここだよ、お姉さんたち。」
ラクはニッコリと笑いながら言った。
そこには大きな城。
だが色は一色、黒しか使われておらず、とても不気味なオーラを発している。
「ここにメリルさんが・・・?」
アリアが呟いた。
若干後ずさるところを見ると、魔王でも怖いのだろうか。
涙目だ。
「・・・行こう。」
ライシェルがそう言うと、ラクが手で制した。
「何を・・・。」

「ライシェル、真正面から行くと兵にやられるぞ。」

ゼロが顔を若干俯かせながら言う。
「だが人の気配など・・・。」
「人じゃないじゃろう、モンスターじゃ。」
ライシェルはそう言われて初めてモンスターの気配に気づく。
アリアも気づいたようだ。
「本当です・・・。ゼロさん、何故わかったんですか?」
ゼロは俯かせていた顔を上げ、笑顔で言った。

「これでも私は殺し屋じゃ!なんでもわかるぞ!」

そう、切ない笑顔で言った。
ゼロはラクに聞く。
「どこからいけば良いんじゃ?」
「あぁ、あそこからだよ。」
ラクが指を指す方向は、城の門のすぐ横。
ゼロがそこに触れると、若干動いた。
「隠し扉かの?」
「そうだよ。じゃあいこう。」

ラクは3人の手を掴んで、隠し扉の中へ急ぐように入った。

4人が入った瞬間、門が開きモンスターたちの大群が出てきた事は、ラク以外は知らない・・・。




第四十七話 完