複雑・ファジー小説

俺様の勇者伝説 第五十四話 機械 ( No.342 )
日時: 2011/08/21 01:59
名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)


「機械・・・?」

ラクのその言葉にライシェルは顔をしかめた。
ラクはコクン、と頷くと、そのままクルアを見る。
クルアを見るラクは、子供らしからぬ表情だった。
「何か、違和感があったんだ。
生き物の気配がしなかった。・・・まるでそう、感情の無いロボットみたいに冷たい空気が、俺には伝わった。」
ラクが淡々と言うと、ダウトが不思議そうにたずねる。

「なぜ、ラクはそこまで、わかっ、た?」
「・・・俺は龍でもあるからね。ちょっと龍の人格に手伝ってもらった。」
そう言って苦笑したラクに、ダウトは若干の違和感を覚えたが、自分の気のせいだと思い、それ以上何も言わなかった。

「クルア・・・さん。」
ライヒが今だ真っ黒と真っ赤を繰り返すクルアに話しかけた。
「クル・・・ア・・・俺は・・・クルア・ハインケル。」
クルアが機械音と共につぶやく。

「へぇ、姓はハインケルというんですか。
私はライヒ・アードバークです。以後お見知りおき・・・と言いたいですが、これから潰す相手にそれは無いですかね。」
フフッと笑ったライヒは妖艶だった。

「真っ赤・・・メリル・・・メリルを・・・守る・・・

俺は、ガキの血を見て黙る奴じゃぁ・・・」

クルアがまた何かつぶやくと、ライヒの方を目を細めながら見据え、剣を握り直した。
「俺を誰だと思ってる。

『あの』戦争の英雄、クルア・ハインケルだぞ・・・!」


そう言ったクルアは楽しそうにククッと笑った。

















「あ?それより話すことがある?」
メリルは面倒臭そうに言った。
ゼロもまた、面倒くさそうにしているが、どうやらかなり必要な情報らしく、顔は真剣である。
「そうじゃ。シャドウ、アリア、『あの』戦争を知っておるかぇ?」
ゼロがそう言うと、シャドウは何か知っている風の反応を示したが、アリアはわからなかったのか、首を傾げた。
「『あの』戦争ってなんですか・・・?」
アリアが控えめ気味にゼロに尋ねると、ゼロは淡々と答えた。

「名前をつけるのもおぞましい、最凶最悪のデカイ戦争じゃ。」

















「『あの』戦争は俺が頑張った。」
クルアが言う。
「ただの土地争いだった。それぞれの軍を引き、敵国を倒し土地や文化などを手に入れる。
どの国にもよくある戦争。
・・・だが、神は国を見離した。

知ってるか?俺の国、まんまと騙されて袋叩きにあったんだ。」

















「袋叩きって・・・?」
メリルが怪訝な顔でゼロを見つめる。
「敵軍が、他国と同盟を組んでおったのじゃ。」
ゼロがそう言うと、シャドウが不思議そうにゼロに聞く。
「む?同盟を組むことがおかしかったのか?」

「なんじゃ、シャドウ。主、さては名しか聞いたことないな?
良いじゃろう教えてやるかの・・・戦うときは、他国と同盟を組まないという約束を交わしたのじゃ。」

ゼロが何か懐かしむようにうんうんと頷きながら言う。
「そんなものを・・・。」
アリアがつぶやく。

「じゃが、敵国は私らを裏切った。」


第五十四話 完