複雑・ファジー小説

俺様の勇者伝説 第五十五話 機械だから ( No.344 )
日時: 2011/08/22 19:32
名前: ミロカロス13 (ID: VYCQ1KaR)

「俺が一番頑張ったのは裏切られたとき。
そりゃもう目は瞳孔ひらきっぱで、変な顔してたらしいぜ俺。」
クルアはそう言ってニヤッと笑う。
「さっ、戦おう、ガキ。今度は本気だ。」

クルアはそう言って、剣を構えた。








同時刻———。


「私も頑張ったんじゃが、なにぶん体力がなくての。
最後の切り札的な扱いじゃった。」
ゼロはそういうと剣を持って立ち上がる。
それにつられてシャドウも立ち上がった。
「ゆくぞ、クルアは本気じゃ。」
「・・・うん、いこう。」
4人はお互いを見て頷くと、クルアたちの元へと走っていった。

















「よっえぇぜ、お前ら。」
そこには倒れた4人がいた。
クルアは一番近くにいたダウトを見ると、その髪を掴んで上を向かせる。
「俺、機械だからよくわかんねーけどさ、アンタまだ戦えるだろ?
強そうだし。」
そう言って人懐っこい笑顔を浮べた。
「・・・おまえとは、たたかわない。」
ダウトがそう言うと、クルアは笑顔だった顔をしかめさせた。
「なんで?」

まるで子供のようにそう呟くクルアは、もう———壊れていた。

「なんで戦ってくれねーの?」
クルアは顔を上げた。

機械からは煙が出て、ショートしているようだった。

だがクルアは普通に喋っている。動いている。

4人と戦っているとき、決してクルアは無敵状態だったわけではない。

攻撃は受けた。

やはり機械、攻撃を受けたところからは機械の部品と思われるものが出ていた。


でも機械は止まるナイ。



「クルアッ!!」



そこへ幼い声が響いた。

「クルアッ!」

メリルだった。
「メリル・・・メリル・・・クルアのジュウヨウジンブツ、だな。」
クルアはそう小さく呟くと、剣を持ち直した。
「メリル、俺と戦えよ。」
壊れた機械。
今のクルアはまさにそれだ。
「クルア、壊れたんだな。」
メリルがクルアを見据えて言う。
「何の話だ?」
「とぼけんな。自分が一番わかってるだろう?」
メリルが目を鋭くし、殺気立たせると、クルアは拍子抜けしたように笑い出した。

「あぁ、あぁ!そうダヨ!俺はキカイだ!
俺はもうゲンカイダ!生きられなイ!戦えナイ!

お前に・・・メリルにモウ会エナイ。」

クルアはそう言って笑っていた声を止めた。
苦しそうに顔を歪ませる。目から涙は出ない。

機械だから。

「隠し事をしてたんダ。これはクルアからの伝言。
『本物』のクルアからだから、お前らきちんと聞いていろよ?」
クルアは歌うように言った。

「メリルにはさよならだ。俺はこの世にはいない。

きっと生意気なお前だから俺に悪態ついてるだろう。

ゼロにはごめんなさい。俺は死んでしまった。

お前は柄になく泣き虫だから聞いた瞬間泣いただろう。

メリルの仲間にはメリルをずっと想って。

アイツは属に言うツンデレだからお前らが引っ張ってやるんだ。」

クルアはそういうと、がくんっと膝をついた。
「・・・ERRORだ。もうすぐ俺は死ぬから、お前ら行っていいよ。」
クルアはそう言うと、ばたんと倒れる。
するとクルアの身体が浮く。
「あ・・・?」
上を向くとゼロとメリルの顔があった。
「勝手に死のうとすんな、クソ爺。俺は手前に言いたいことがあるんだ・・・!」
メリルはそう言うと、クルアの腕を自身の肩にのせて引きずる。
「私もクルアには言いたい事がたくさんあるからのぅ・・・。」
ゼロがそう言うと、片腕を自身の肩にのせた。

「城をでるぞ。」

「・・・離せヨ。俺ハ機械でモウ死ぬんだ。だから・・・、」
クルアが次の言葉を発しようとすると、メリルが遮る。

「っざけんなよ!!!!
手前はクルアじゃねぇ!そうだ、機械だ!別人だよ!
でも、そこにたとえ機械だろうが、人間だろうが死に掛けてる命があったら、見逃すわけにはいかねーんだよ!
それが人間だろう?かつてお前が・・・っつても今のお前にはわからないだろうけど、俺に教えてくれたことだ!
もう一回覚えなおせ!バカクルアァ!!!!」

ブレス無しでメリルは叫ぶように言う。
それを見てゼロがふふっと笑った。
「よいことを言ったのぅ、メリル。たしかにクルアの阿呆、言っておったわ、そんな事。」
そう言って、メリルを撫でる。
そしてクルアを見ると、その鋭い目を細めて言った。

「主は今クルアになっておる。言っておることも似ておる。
すがたかたち、ましてやスリーサイズも一緒じゃ。」

「おい、今の変態発言だ婆。」
メリルが何か呟いたがゼロは聞こえなかったようだ。

「じゃが、芯までは無理じゃったようじゃな。」

ゼロがそういい捨てると、クルアはフッと笑った。
「そうだな、所詮コピー・・・機械だな。
メリル、本当ありがとう。そんなこと言ったのはお前が初めてだ。」
そう言って笑った。
心の底からクルアは笑った。
「ふんっ・・・。」
メリルはそっぽを向いた。
照れているのか顔が赤い。
「城からはここから出られる。さぁ行こう。」
クルアは肩を貸してもらいながら扉を開けた。

だが・・・

「え・・・?」
そこは外ではなく、大きな広間。
汚れを知らない白で埋め尽くされた部屋だった。
「なんでだ・・・?ここから出られるはずなのに・・・。」
クルアが呟くと、ライシェルとラクとシャドウとゼロが何かに気づいた。
「誰かいる・・・。」
ラクが言った。
ラクは天井を見た。

「「あそこだっ!!」」

ライシェルとゼロが叫ぶ。
そこには赤いドレスに身を纏った少女が居た。

「あ、もう気づいたの?あーあ、しばらく観察しようと思ったのに。
いいや。じゃあ、とりあえず『君』は殺すね。」
少女が君と言った視線の先には———クルア。

「クルアァ!!」




第五十五話 完