複雑・ファジー小説

#02 - すーぱーろりーた ( No.13 )
日時: 2011/07/30 18:06
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)

 「おにいちゃん!」

何、デジャヴだと!?
 ロリボイスがする方向へ目を向けると、美少女だった。美幼女だった。美幼女が、俺の友達に声をかけていた。嘘だ、アイツにあんな可愛い子が隣に居るはずがない……! 

 「俺の隣にはこんな暴れ猿だってのに……!」
 「何か失礼な事言ってるけどどうしたの」
 
冷めた様な目で要に見つめられた。と、同時に怒ってる様にも見えた。

 「いやな、今西垣にスーパーロリータが引っ付いてたんだよ」
 「ふうん、西垣もアンタと同じ悪趣味だったってわけね」
 「いやいや、何であんなブサイクの横に何であんな美幼女が居るんだって所だろ。幼女でも泣いて喚きだすぞ、アイツの顔」

 正直な所西垣はあまりイケメンじゃない。俺の友達だが言おう、アイツはブサメンだ。少し太り気味のぽっちゃりした感じの男子。顔はニキビ野郎である。性格はいい奴だがな。
 
 「まあ……西垣の顔は見てるとイライラするしね」
 「そこまで言ってないよ俺」
 「あんなブツブツ存在しててもあんま意味ないしね」
 「やめろ要! 西垣が可哀想だ!」

西垣への暴言なのに俺が泣きたくなるって本当どういう事だよ。しかも無表情で言うもんだから余計こえーよ。西垣の顔見るよりもコイツが口を開いた時の方が恐怖を覚えるわ。幼女が尋常じゃない程泣いてしまうわ。

 「お、崎山と倉本じゃねえか、何してんだ?」
 「ああ、アナタいても意味ないわねって話を」
 「俺は何も言ってねえよ!?」

何だコイツ……本人の前で文句言うとか罪悪感はないのか。俺が焦ってしまうわ。
 西垣は何とも言えない様な怪訝そうな首をかしげた。やめろ、お前がやっても可愛くない! 一方隣の幼女も不思議そうに顔をかしげている。こっちは可愛いなおい。

 「ああ、その可愛い幼女さんの事可愛いねって言ってたんだっけ、アンタ」
 「ああその通りだ」
 「何でこんなブサイクにこんな可愛い子が傍に居るんだって事も言ってたわね」
 「しかし否定できない!」

ちっくしょう、まあちょっとの罪悪感はあるからいいとしよう。俺はまだ優しい人間だ、うむ。

 「ああ、コイツは妹だよ」
 「似ても似つかない程の可愛さね」
 「お前本当に兄妹なのか」

流石西垣、優しすぎるからブサイクって言っても怒らない! 何ていい奴なんだ、全く……西垣って奴は……!
 それよりなんでこんなブサイクからこんな可愛い子まで西垣家は揃ってるんだ。イケメンとか家に居るんじゃなかろうな。

 「お前ら何か失礼になってないか? まあ似てないのは認めるけど。コイツは誰に似てるのか正直な所分からない」
 「分からないのか」
 「そりゃアンタが生まれるくらいの親の顔だからね」

西垣はともかく親まで貶してきやがった。勇気あるというか怖い物知らずというか。幼女は紹介されつつも余所見している。目を向けてる方向はどうやらゲームらしい。そんなにゲームに夢中か。

 「顔の話は俺が傷つきそうなんだけど」
 「しょうがない、コイツはそんな奴なんだ」

ネガティブだった。マイナス思考でしかなかった。
 
 「おにいちゃん、あれ買おうよ」
 「んあ? ゲームは駄目だ、安い物をねだれ」

西垣の服の裾を引っ張って西垣の服の袖を引っ張って西垣の服の袖を引っ張って——! 引っ張ってる相手がもう少しイケメンだったならば。相手がとても残念すぎる。く、俺はここでそれを見てるしかないなんて! 俺は手を強く握る。頭の中には、悔しさしかなかった。

 「キモイぞ倉本燐」
 「それを言うな要」
 「ああ、そういや紹介し忘れてたけど、コイツの名前は鈴って言うんだ」

 同じ名前……だと!? なんて幸せだこんな鈴ちゃんと同じ名前とか幸せ者だ俺は。感激で手が震えるぜ。
 何だか西垣と要に冷たい目で見られている気がした。

 「西垣鈴ですっ。よろしくおねがいします」

何この天使……。生きてて幸せって初めて思ったわ。幸せすぎて悶えそうだぜ。これがスーパーロリータなんだな。
 
 「やっぱ変態ね」
 「俺より可哀想だ正直」


すーぱーろりーた / end