複雑・ファジー小説

Re: 【短編】 Dreamer 【物語】 ( No.15 )
日時: 2011/08/08 21:36
名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode

[ 光る星と光る花冠 ]


 今日は特に変わった日ではない。平凡すぎる夏休みの一日の夜に、ただ外に出て星を眺めている。それだけの話。俺が外に出るなんてバイトか学校か友達からの強制的なお誘いのどれかだ。そして今は後者で、俺は海辺に来ている。
 一人で、ではなく。ちゃんと皆居る。俺がただ手伝っていないだけで、皆は打ち上げ花火の準備をちゃんとしている。
 俺が皆を見ていると、横から声がした。

 「おーい、お前も手伝えよ」
 「あいよー。……それにしてもよくやるな、こんなの」

俺が楽しそうに手伝う皆を見てそう言うと、隣に居る秋原遊生はへらへらと笑って言った。

 「何言ってんだよー、楽しいじゃねえか、花火」
 「お前はホント、名前負けしない奴だよな」
 
遊んで生きる。それが遊生だった。何だかいつもへらへらしててはっちゃけてて、俺とは真逆の雰囲気を持った奴。そんな奴がなぜ俺と友達ならぬ、親友なのかよく分からん。
 
 「お前は名前負けしてるよな、陰気な奴。な、星夜クン」
 「うっせえ」

また笑って茶化す。イライラしないのはコイツ特有の何かだ。
 確かに俺は名前負けしてる。星夜なんて綺麗すぎて光りすぎて何だか微妙だ。平仮名で名乗るならともかく、漢字で名乗ってしまうと名前負けといつも言われる。

 「いつでも気楽に居とけばいいんだよ。こんな日に悩むなんて空気読めない奴だぞ、お前」
 「そんな事言われたってなあ」

正直悩んでいるとも思わないし、遊ぶのも面倒とか思うだけだ。いや、別に遊ぶのは良いんだけど。やったら楽しいし。でもまあ、自分の気持ちが何であろうが、参加したからにはやっぱ楽しそうにした方がいいかもしれない。一応。

 「こう言う日はよー、花火でも見て綺麗とか思ってれば良いんだよ。いつも考えてばっかりだと、疲れちまうぞ?」

 頭を掻いて、俺を気遣う遊生。——そうか。俺は悩んでなんかいなかった。でも、何か色々考えてばっかだったなあ。そりゃ、疲れもするわな。下向きと言うか、陰気にもなるわ。
 こんな日ぐらい、気休めしたって良いよな。 
 近所にある海で、ショボい打ち上げ花火を放って楽しんでれば、良いよな。


 「たまやー」 

無表情で、そう言ってみる。
 輝けたら、いいなあ。


光る星と光る花冠 / end