複雑・ファジー小説
- #01 - Dreamer ( No.2 )
- 日時: 2011/06/25 19:50
- 名前: 紫 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
[ Dreamer ]
夢は夢であり現実ではない。
夢を現実に変える事はできる。余程の事じゃなければ。
こんな私も、頑張れば現実になる夢を持った人の一人だった。
「夢芽はさ、何になりたい?」
「何にって、何なのさ」
二人だけの帰り道。夕日が出て暑い初夏の日、私の彼氏である鈴木有芽が、ふいに訊ねてきた。
有芽は、私と同じ名前だ。性格もどことなく似てると言われるが、外見。一番違うのは外見である。彼がイケメンと呼ばれるのなら、私は凡人と呼ばれる可哀想なただの女子高生だ。
「何にって将来の夢だよ。ほら、俺らも三年後大人になるんだぜ」
「ああ、私は魔王になりたいとかそういう素敵な夢の話をしていると思った」
「全然素敵じゃねえよ!? それになんで高校生にもなってそんなありえない夢の話をするんだよ!」
つっこまれた。鬼の様な形相で。ただし子鬼。子鬼って可愛いよね。いやまあ見たこと無いけど。つまり私は有芽が可愛いって褒めてるって事だ。心の中だけでだけども。
「イラストレーター」
「はい?」
「将来の夢、イラストレーターなの。と言うよりアンタ三年後に本当に大人になれる訳? 立派じゃない大人の間違いじゃないの?」
「お前彼氏に失礼な奴だな! 立派な大人にくらいなれるよ!」
またつっこまれた。私は可笑しい事言ってないのに。むしろ全て正解だわ。パーフェクトだよブラボーだよ。
ふと空を見上げてみると、いつの間に空は薄暗くなって三日月が浮かんでいた。
「あー、暑い。汗だっくだく。お風呂入りたい」
「あー、俺も」
「蟻さん以下のナメクジ並みの私と?」
「どんだけ卑屈だお前!」
またつっこまれた。三度目だが大丈夫か? 恐らく異常ではない。嘘。頭で独り言言ってる私はやっぱり異常だった。
卑屈と言われると、そうじゃない。卑屈って言うもんは、自分を貶すもんだ。しかし違う。私は私とナメクジさんを褒めてるのだ。いやでも蟻さん以下って言っちゃったからやっぱ貶してるのか? 考えたがそんな事実はどうでも良かった。
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