複雑・ファジー小説

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.20 )
日時: 2011/07/10 09:43
名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

「臨音、それは“昨日と同じヤクザ”を荒らせって事か?」
俺の嫌いなあいつはそう臨兄に質問っぽい感じで言う。
俺は頭の奥隅に置いて消去寸前だった昨日の出来事を思い出していた。
まるで映画を見ているかのように……。


「—— や、止めてくれ…」
「殺さないでくれ !!」と大きな声で男は言った。
その男は凄く動揺し顔を青くして—— 俺にせがった。
「…何言ってるのさ、俺達はあんた達と違うもんだから殺されるなんて—— 本望だろ?」
ニヤッと笑う俺はさぞかし男にとって“血に飢えた犬”のように見えただろう。
だって俺の通称なる呼び名は—— 『地獄の番犬ケルベロス』だからだ。
男は「ヒィッ……」と小さく言って後ずさりをする。
何故この男がこんなにも俺にビビッているかというと、さっきまでいた50人ほどの男達をほんの少しの時間で俺と他の3人で—— 葬ったから。
この男はあるヤクザの1人でとても優秀なる者だ。
そのこの男が入っているヤクザでは—— “麻薬密輸”をしているという話を聞いて俺達4人はそのヤクザにバレずにひっそりと色々と情報を乗っ取り—— 今削除している。
俺は自分の持っている猛毒のナイフを男にちらつかせる、俺の本能と言う無意識で。
「ほ、本当にお願いだっ…『地獄の番犬』 !!お、俺は…何も知らないんだ !」
せがって来る男はオドオドとして俺の名を呼ぶ。
本当に弱い奴なんて大嫌いだ、俺の名を気安く呼びやがって。
こうやって強い奴に対して—— 弱い者アピールをしてくる。
その男は嘆きながらせがって来る為、俺は冷ややかな目で見ながら「…分ったよ」と言った。
その男はその言葉を聞いて一瞬安堵を喫する。
だが次の瞬間には—— 男の首が宙へと飛んだ。

「…ハ、馬鹿じゃねぇの? 何安堵しているんだよ、屑野郎が」

俺はそう言って宙へと飛んだ男の首に笑ってやった。
俺の嘘を簡単に安堵した奴はこれで何人目だろうか。
その男の首からはどす黒い血がその場を飛び散らし、俺にもそのどす黒い血が付く。
本当に汚い血だ、こびり付く血を拭って俺はその場を後にした。


ふと目映い白い壁が目の前に現われた。
ああ、そういえば……ここはあの黒くて汚い血の海の場所ではなく、俺達の集まる集合場所だったと現実に引き戻される。
だけど、思い出した自分の記憶に吐きそうになる。
本当に気持ち悪い、それども俺は踏ん張る。
また殺るのかと思うと本当に気分が悪くなる。
そんな俺に気付きもしないのか臨兄は少し自分の眼鏡をクイッと少し上げた後に「あぁ」と肯定して続けて言った。
「紅真の言う通り、昨日と同じヤクザだ。…だが、ボスから少し気になる言葉を言われてな」
「…気になる言葉、ですか?」
巡兄はキョトンとした顔で臨兄をジッと見る。
臨兄は少し間を開けてから口を開いた。

「…あぁ。ボスがこう言ったんだ、『あの組のヤクザは、我々マフィアでも知らない【なにか】を掴んでいるようだからな。今回もそうだ』とね」

その言葉を聞き一瞬にして静まった。
確かにボスにしては妙すぎる言動だ。
マフィアの中でも確かに裏表がある、だけども—— “我々マフィアの者でも分らない【なにか】”ってなんだ?
「本当にどう言う意味で言ったかは幹部筆頭の俺でも分らないさ。言った張本人のボスしか、その意味を知っていないのだからね」
「確かに」というように臨兄以外で俺を含めた3人は頷いた。
ボスは何を考えているか分らない、何を思っているかも分らない。
だけども俺達は——。

「まぁ、ここで分っているのは—— 俺達はボスに従い荒らして真実を掴むしかないって事だ」
「そうしかないな、俺達はそうやって生きてきたからな」
「そうですね…僕はすぐに取り組みます」

3人は互いに確かめ合い、そう言って取り掛かる。
本当にマフィアらしい会話で、真実を掴む事は俺にとって大好きな仕事だ。
だからこそ—— マフィアなんてやめられない。

「どうした、王我?」
「ううん、なんでもないよ臨兄。俺、ちょっと武器の手入れしてくるわ」

そう言って俺は自分の持ち場に付く。

       ——この真実が明らかになる時に備えて——

         第5話「Provide」