複雑・ファジー小説

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.29 )
日時: 2011/07/15 20:02
名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

「—— ヒィィィッ… !!」
断末魔に襲われているかのように逃げ回っている男は息を強く吐きながら後ろから追いかけてくる俺を見て、恐怖となる叫びをする。
さっきまでいた15人位のヤクザ達を俺は問答無用に相手した。
何故人数がさっきまで減っているかと言うと臨兄や巡兄、あと俺の嫌いなあいつも各自に分散して相手を4つのチームに分けたからだ。
俺はその1チームを相手した—— たかが生意気な学生だと思った奴等が集まったチームを。
あいつ等は俺を完全に舐めていた、俺が“地獄の番犬ケルベロス”だとは知らずに。
こいつもその一人だが、恐怖により顔が物凄く青い。
「オイオイ…逃げんなよっ !!」
「—— !」
俺は思いっきりその男の頭の上の中を飛んで、目の前に出くわす。
男はもっと顔を青ざめた後、「ヒィッ !」と言って尻餅をついた。

「や、やめてくれ…許してくれっ !!」

何度も何度も聞いた、その許しを請う言葉を——。
“弱い奴は強い奴に怯え、強い奴に許しを請い逃げる”…俺は何度も見ていた。
何度も何度も見ていたからこそ—— 許しなど無い。
俺は許しを請うようにせがむ奴はとても大嫌い、だから本当ならば普通の一般人として過ごしていればここにはいない。
だけど、俺は血に飢えて武器に飢えて世の中の刺激に飢えて——。
恐怖に飢えて気持ちに飢えて、飢えて、飢えて、飢えて飢えて飢えて飢えて飢えて飢えて飢えてウえてウえてウエてウエてウエてウエテウエテウエテ——。
だから、俺は自分を壊して生きていた—— マフィアに入る前は。
でも今は違う、俺は—— “ボスに可愛がれて領域を守る首輪の付いた飼い犬”だ。

「…“許す”?俺に効くと思っているの、その言葉。俺はマフィアの天辺のグループ『ゴッド・コードウルフ』の“地獄の番犬ケルベロス”だって言う事、知っているくせに。そうやって許しを請うのは間違っているんじゃない?」

ニコッと顔は笑っていながらも、冷たく鋭い瞳で男を捕らえている俺は冷淡に言うと、男は震え上がった。
男の瞳には—— 俺じゃなく笑みを垂れ流し待ち構えている“死神”を捕らえているだろう。
「…あんた達、本当に悪いと思っているの?…悪いよね、ボスの領域に触れちゃったんだからさ。だから—— ボスに可愛がれている首輪の付いた俺達犬が、わざわざあんた達を制裁して潰しているんだよ」
「俺はまだ、学生だけどな」と付け足して俺は言った。
男は青い顔をしながらも「くっ… !!」と言い返せないようで少し表情が歪んだ。
確かにこの男は俺達のボスの領域を知っていたはずだ、その領域に触れてどうなるかは知らないのが現実だが。
しかも、よりによって自分より若い奴に殺されると言う事はもっとも予想していなかった事態だろうね。
…完全に舐めていたから痛い目に会うんだよね、絶対にさ。
ジリッと男は何かを取るように腕が少し動いたのを見て、俺はその男の腕をすぐさま—— 背中に隠していた太刀で斬った。

「—— ぎゃぁああぁぁあぁぁぁぁあっぁああああ !!」

男は一瞬何をされたのか分らなかったが、飛んで行った腕を見た数秒後に強烈な痛みによって大きく叫んだ。
「…あーあ、まず腕一本飛んだよ」
少し残念そうに俺はそう言った。
「本当は最後にバラバラにしてやろうと思ったんだよな」と思いながら。
男は斬られた部分の血を見て恐怖に恐怖が覆い被さる。
「わ、悪かった…俺達が悪かったんだ…。だ、だから命だけは助けてくれ…お願いだぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ !!」
そう狂ったように叫ぶ男を見て俺は太刀を戻した後、すぐさま—— ブツを男の額に当てた。

「た、助けてくれっ…俺がこうやって謝って——」

パァンと男の言葉はブツから放たれた弾の音によって遮断された。
「…ウゼェ。さっきから“許さない”って言っているだろうが」
ブシュウゥゥ…と男の額から血飛沫が飛び散って、男は倒れた。
その男の血飛沫が—— 俺の髪にこびり付く。
俺はこびり付いたこの血が嫌いですぐに拭った。
何度も何度もこんな毎日が続く、嫌いな嫌いな汚れた奴等の血は——。
そう思っている時、ジジ…と無線機が反応するためすぐに俺は聞く。

『—— 王我・巡斗・紅真、各自終わったか?』

臨兄の声だ、俺はすぐに返事をする。
「臨兄、俺は終わったよ。…何回もせがむ奴で本当に手応えが無かったけど」
『ハハ、王我は返事が早いないつも』
若干臨兄の苦笑した感じの返事が返ってきた、いつもそうだけど。
あぁ、本当…早く家に帰って風呂に入りたくなる。
こんな汚い血、すぐに綺麗に落して一日をリセットしたい感じだ。
『王我、他の二人も終わったそうだ。すぐに帰ってもいい』
「あ、そう。じゃあ…そうさせて貰うわ」
「明日も学校だしね」と付け足して、少し背伸びをする。
あぁ、眠くなった…いつもこんな遅くまで働くから明日も眠くなるのは決定だな。
まぁ、勉強で分らない所はいつも敬語で話す巡兄に教えてもらうし。
さっきまで血の海の中にいた俺は、その場を後にした。
その光景を見られていたのも気付かずに——。

———

「あれが私の…私の幸せを——」

王我が去った後、何処からか隠れていた—— 女の子がギリッと歯音を立てた。
紫から赤のグラデーションの綺麗な髪でツインテール、前髪は左にかかっているため左目は見えないが右目は透き通るような瑠璃色が光っていた。
その右目の瞳は王我が処理して血まみれた場所を睨みつきまた一層とギリッと歯音を立てる。

「…私が、やらなくちゃ。あいつ等を…あいつ等を—— 地獄に送らなければ」

嫉妬に狂ったように女の子は一瞬怒りをあらわにしてそう言葉を吐き捨てた後、何処かの闇へと消えて行った——。

        ——真実が少しずつ迫っているとは知らずに——

        第7話「Count」