複雑・ファジー小説

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.30 )
日時: 2011/07/16 11:07
名前: 龍宮ココロ (ID: Zzn.Kyek)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

『—— 次のニュースです。本日未明、港近くの…倉庫にて……7、80人の複数の死体が発見…されました。遺体はど…も破損が激しく…一部が鋭利な刃物によ…。警察…の捜査は難航すると…見られ…』
ジジ…と雑音が入ったラジオのニュースを聞きながら、俺は自分の家のソファに座って朝いつも飲むコーヒー牛乳を一口すすった。
本当ならテレビがあるし見た方がいいと思うが、俺の朝は毎日ラジオでニュースを聞く。
—— マフィアに入る前からの癖で治らないから。
「…ふぁぁ、眠い」
昨日の疲れがちょっと残っていたらしく俺は欠伸をした後、背伸びをした。
丁度ふと時計を見ると、そろそろ登校しなきゃいけない時間だ。
「…さてさて、行きますか」
そう呟いた後すぐにコーヒー牛乳を勢いよく飲みきってから、いつもの日常である学校へと向かった。

———

「ねぇ、今日のニュースは昨日よりすごいニュースだったよね !」
「そうそう、誰だか知らないけど7、80人を殺すなんて…怖いよね」
「だよねぇ」と俺のクラスの女子がワイワイガヤガヤとまた少し騒いでいた。
いつも通りの日常と言ったら日常だ、よく話題が無くなったりしないなと俺は思うよ。
まぁ—— 殺した張本人はここにいるけどね。

「おはよ、王我。また世の中物騒になってきたな」
「あー…おはよ」

またこの繰り返しのエンドレス。
一応表では俺の友達となっているこいつは、ため息交じりの苦笑を見せてきた。
「本当に、何の目的でやっているんだろうな…人殺しって」と呟いた言葉を耳にする。
…張本人、目の前にいるんだけど。
別に好きで殺っているんじゃない、ボスの命令だったからね。
一応こいつには「…あぁ、そうだね。…何考えているんだろうね」と嘘の苦笑した顔で返した。
もう嘘の顔は慣れてきた、誰にもバレないほどに。
けれども、その嘘の顔を見破った奴はたった1人しかいないだろうね—— 俺と同じ幹部職にいるその1人しか。
「あぁ、そう言えば」と何か思い出したような声を聞いて「…何?」と聞き返す。
するとそいつは少し笑みを見せて言ってきた。
「今日、このクラスに新しい転入生が来るらしいぞ。しかもその転入生はお嬢様学校に通っていたらしい」
「へぇ…珍しいね、こんな時期に」
「だろ?珍しいよな」と言ってそいつは目を輝かせた。
多分、こいつの頭の中は凄い幸せなドピンクなんだろうな。
でも本当に確かに珍しい、普通ならこんな中途半端な時期には転入生など来るはずも無い。
しかも尚更、お嬢様学校に通っていた奴が急にこんな普通の一般市民の学校に来るか?
まぁ、それ言ったら俺もそうなんだろうけどもさ…マフィアの者だし。
朝のHRの鈴が鳴るとそいつは「あ、また後でな !」と言った後、すぐに席に戻って行った。
…いつもこんな感じにすぐに戻ってくれたら、余程俺的には嬉しいんだけれども。
ガラガラと教室のドアが開く、女の担当の先生が来たからだ。
「皆さんおはようございます。はいはい、早く座ってね」
まだ座っていない女子の数名に声を掛ける。
さっきまで少し騒いでいた女子のグループだ。
声を聞いたのと同時に「す、すいません…」と言って颯爽と席に座った。
全員が座ったのを見て、女の担当の先生は教卓に着いた後—— 口を開く。
「全員来てますね、おはようございます。今日は朝から物騒なニュースが流れましたね…。私はとても心が痛くてしょうがないです、人殺しをする人や麻薬密売などする人はどう思っているんでしょうね」
そう言って辛そうな顔で俺達全員を見てくる。
俺はマジマジと聞いている振りをしながら先生を見た。
「残念ながら、俺はその1人だけどもね」と思いながら。
嘘の顔で嘘の気持ちで嘘を覆い被って、俺は先生の話にジッと耳を傾ける。
「…すいません、急に朝からこんな話をしてはいけませんね。皆さんは朝のニュースのような事が無い様に気を付けましょうね」
ニコッと先生が笑うと「はーい、分ってます !!」と女子の数名が答えた。
本当に元気だな、俺は物凄く朝に弱いから元気は無いけど。
「では、普通ならいつも通りのHRなのですが…。皆さんは噂を耳にしていると思います、そう…今日はこのクラスに転入生が入ります」
その言葉を聞いて一瞬にしてざわめく。
俺は興味が無い様な顔で黙っていた。
たかが転入生だ、そんな事だけでざわつくなんて…って思っていたら、ふと隣を見ると—— 開いている席がある。
あれ、昨日…こんなのあったっけ?
というか、俺の隣って誰もいなかったような気がするんだけども…。
「どうぞ、入ってきて」
先生がそう優しい声で言うと、ガラガラとゆっくり優しく開けた音が教室の中に響いた。
カツカツ…と、この学校の上靴の音ではない音が響きながら入ってくる。
一瞬珍しく—— 俺の目は入ってきた転入生の姿を捕らえた。
紫から赤のグラデーションの綺麗な髪でツインテール、前髪は左にかかっているため左目は見えないが右目は透き通るような瑠璃色。
そして、血色があまり無いような綺麗な白い肌であるも普通の男子なら声を掛けてしまいそうなそんな感じ。
…でも、女子も声を掛けそうだ。
俺のクラスの男子と女子は一瞬、彼女に見惚れていた後に「おぉ… !!」と感嘆の声が上がった。
その入ってきた子はペコリと一旦一礼をして口を開いた。

「初めまして、お嬢様学校である『悠里学園』から来ました。『霜雪流空茂(しもゆきるくも)』と言います」

ニコッと笑うと、綺麗な白い肌にほんのりとした赤みが乗っているため俺以外の男子は一瞬にして釘付けとされる。
「彼女は急な父親の転勤となり、このクラスに転入となったの。良かったら仲良くしてね、えっと…席は—— 王我君の隣の席だから」
そう言った言葉を聞いた男子達はバッと俺の方を向く。
「え…な、何…?」
急にバッと向いてきたのに俺はちょっと驚いた顔をした。
男子達は小さく「羨ましい…」や「席、変われよ…王我」などなどグチグチと呟いていた。
…あぁ、なんかグチグチ言われるとか最悪だ。
少し苦い顔をした後、深くため息を付いた。

       ——どうなるんだろ、これからの俺の日々は——

       第8話「New classmate」