複雑・ファジー小説
- Re: ゴッド・コードウルフ。【参照240突破 !】 ( No.34 )
- 日時: 2011/07/21 21:43
- 名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
カタカタカタ…とキーボードを叩く音が暗い部屋の中で響く。
その暗い部屋の中でポツンと、パソコンの青白い光の中で、巡斗は真剣な表情で何かを探すように操作していた。
ガチャ…とその部屋のドアが開かれた後、パッと電気が着く。
「—— !あ…紅真さん…」
急に着いたのに驚いてドアの方を見た巡斗が見た先に、紅真がカップを二つを持って立っていた。
「よく暗い所で眼を悪くしないよな、巡斗」
少しため息を交じった言葉を俺は言って、巡斗のパソコンの机に近付く。
「す、すいません…癖、なので…」とちょっとオドオドとした表情で巡斗は返した。
コト、と片方のカップを巡斗のパソコンの机に置いて「ホラ、ココア入れておいた。俺はコーヒーだけどな」と俺は言った。
「あ、ありがとうございます…紅真さん…」
「別に、俺とお前の仲だしな」
「そうですね…」と少し苦笑に近い笑みを巡斗はこぼした後、ココアの入ったカップに口を付ける。
何故俺と巡斗が一緒にいるかと言うと、まぁいわゆる“捨てられた奴を拾ったお世話好き”と“捨てられたのを助けてもらった居候”である。
もう巡斗が俺の所で居候して7年の月日が経ったのに気が付いた。
あの時はまだ俺が高校生だったなとしみじみ思う。
そう思いながら自分のカップに口を付けた。
ふわっとコーヒーの香りが漂った後、すぐに空気に混じり消える。
巡斗は少し飲んだ後、またカタカタカタ…とキーボードを軽く叩きながらパソコンと向き合う。
「よく頑張るな、情報屋としても」
「あ、はい…。これが俺の取り柄…ですし」
パソコンをやりながら苦笑する巡斗は7年前とは見違えるほどだ。
7年前はあんなにもか弱く人が怖くて怯えていて、最初の半日は口も利いてくれなかったな…。
少しふとパソコンの画面を見ると、どうやら一昨日と昨日のヤクザの情報収集のために色々とよく分らないファイルが開かれていたりインターネットに接続していたりとごちゃごちゃしている。
というか、普通に一般人が使うファイルが尋常じゃないほど多い。
俺も一応パソコンは出来る方だが、巡斗よりは多分結構少ないだろう。
…よくやれるな、こんな莫大なファイルの数を迷わないで。
「—— …おかしい、です」
ボソッと巡斗は呟いた後に、キーボードの打つのを—— 急に止めた。
「どうした、巡斗?」
急に止まったのに少し違和感があり、話しかけてみると巡斗は若干顔が固くなる。
「…おかしいんです、何かが」
「何かって…なんだよ?」と言うと、巡斗は親指の爪を軽くかじり俺の言葉を返す。
「…昨日乗っ取ったはずのページが—— 勝手に…消えているんです」
「—— は…っ !?」
巡斗の言葉にあまりにも驚いてしまった。
巡斗は優秀で、大手企業のシステムでも引っかからず乗っ取ってしまう凄腕の情報屋だ。
その乗っ取ったシステムに入っているちゃんとした情報は、巡斗がちゃんと保管している。
それなのに…—— 勝手に消えるなんて有り得ない。
「どう言う事だ…っ !?昨日もちゃんと保存したって言ったんじゃ——」
あまりにも驚きの調子の気持ちで言うと、少し巡斗は頷いた。
「はい…確かに、言いました…。ですが…消えているんです、跡形も無く…」
「—— っ !!」
思考回路が停止した、ピシッと何かが走って動けなかったように。
巡斗の顔を見ると「残念ながら…」と言う様な少し俯いたような顔だった。
冷や汗が滴る事を珍しく感じられた。
一瞬の沈黙 、それはとても—— 長く感じられた。
黙って俯いたような顔でいた巡斗はその沈黙を断ち切るようにやっと口を開く。
「僕も最初は有り得ない…と思っていました…。ですが…何度やっても消えて行くんです、一日に何ページと言う位の…速さで」
「—— つまり、俺達は…」
俺の言葉の続きを分ったようで、巡斗は少し頷いて言った。
「どうやら…—— 相手に“嵌められた”、かもしれません」
サァ…と、一瞬血の気が引いたような気がした。
考えたくも無かった事が—— これから起こるのを感じてしまった。
そう思っていた時、ピリリリ…と俺の携帯がタイミングを計っていたように鳴り響いた。
———
「ふ、あぁぁ…眠い…」
風呂に上がり、俺は大きな欠伸をした。
時計を見るともう10時30分をちょっと過ぎている。
本当なら依頼で見れなかった録画した番組を見るのだが、今日は何故か気が乗れない。
…男子の視線によって精神とか削がれたからか?
少し首を傾げながら考えたが、脳が疲れるからすぐに止めた。
明日起きれなかったらヤバイしね…あまりブドウ糖を使いたくないし。
「あ…久々に、コーヒー飲もうかな〜」
そう言えば、最近臨兄から貰ったインスタントコーヒーがあるのに気が付いた。
インスタントコーヒーの入れ物を少し開いた後、やかんに水を入れて強火にかける。
お湯になる間、俺は少し背伸びをして臨兄の事について少し思い返す。
臨兄は何かといつも弟分の俺を気にかけてくれていて、色々と貰い物があったりする。
ちなみに俺の住んでいる部屋も臨兄からの貰い物…だと思う。
3年前に“『俺は部屋なんて何部屋も持っているから王我のマフィア入隊の祝いとしてあげるよ』”と言ってたし。
…臨兄の事、よく分らないけれど確かどっかの大手企業の社長だとか聞いたような。
まぁ、あの説得力があるし商売の腕も良いから十分に有り得そうだ。
そんな完璧でありそうな臨兄はあの汚い場所から俺を—— 救い出した。
—— もう消えてもいいような命だったのに。
そう深く考えているとピィィィ…と急な音に反応する。
ハッと我に帰ると、その音はやかんから発する音だ。
「あ、ヤベ !」
慌てていそいそとすぐに火を止めた後、自分用のカップにインスタントコーヒーの粉を二杯を入れお湯を注ぐ。
お湯を注いで丁度いい位になった後、俺はソファに向かって座り一口飲む。
「ふぅ…落ち着くなぁ…」
優しいため息をした後、カップをソファの近くにあるテーブルに置いた後—— ピシィ…とヒビが入った。
「—— !!…何か…何か、嫌な予感がする」
虫の知らせの何かを俺は一瞬にして違和感として感じた。
——その予感が当たったのは、すぐ近い現実だとは知らずに——
第10話「Hunch」