複雑・ファジー小説
- Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.37 )
- 日時: 2011/07/29 19:45
- 名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「ふぁぁ…朝、か」
ぼりぼりと頭を少しかいて欠伸をした後に、カーテンを開けると光が差し込み俺を包んだ。
「ん…眩しい…」
いつもより清々しいような雲ひとつ無い晴れた天気だ。
「今日は平日ラストの金曜日だ」と思いながら少し日の光を浴びて背伸びをした後、前に買って置いた朝食用の食パンを口に入れる。
そのパンを口に入れて食べながら、野菜など取り出して調理をする。
いつも俺は一人で昼食を作って持っていく、作る品は少ないけど。
というかほとんど俺の作る品は臨兄からちょっと教えてもらったもの。
俺は小さいフライパンを取り出し、野菜を炒めていく。
その時、俺の携帯から着信音が流れた。
「…ふぐだお?(…誰だろ?)」
カチッと火を止めて、まだ途中まで食べていた食パンをテーブルに置いて折り畳み携帯を手に取る。
電話番号は書いてあるが相手は誰だか分らない、「間違い電話かなぁ?」と思いながら俺はピッと電話を受ける。
「もしもし〜善良なる一般人ですが誰ですかぁ〜?」
ちょっと悪戯っぽい感じの口調で言うと、少し笑った声が聞こえた。
『善良なる一般人な訳ないと思うけれども?—— 王我?』
「—— ワォ、朝から電話するなんて珍しすぎだね臨兄」
電話の相手はあまり電話を掛けない臨兄だった。
俺は本当に少し驚いた。
どおりで分らないはずだ、あまり掛けないものだから。
電話の相手である臨兄は苦笑してから優しい口調で言う。
『まぁ、少し電話してみるのも良いかと思ったら王我の電話番号を聞いていないのに気付いて…探すのに一苦労だったよ』
「それはそれは。逆に俺は臨兄の電話番号なんて知らないから、間違い電話かストーカーが電話してきたと思ったけどね」
『王我はストーカーされるような生半可な一般人じゃないだろう?』
「確かにそうだけどね」
けろりと俺は臨兄が言った言葉を返したら、『本当に王我は飽きないね』と臨兄の苦笑が聞こえた。
「…んで、その珍しく掛けてきた臨兄がこうしているって事は今日は—— 何かあったの?」
『…察しが早いね、やはり王我が俺の弟分で良かったよ』
電話の相手である臨兄の方から少しため息付いた音が聞こえた後、背筋がゾクッとしそうな感じの真剣な声が耳に響いた。
『昨日の夜、「ソルジャー(構成員)」と「アソシエーテ(準構成員)」の集団約280人が—— 何者かに殺された』
「—— …は?」
正直、自分の耳を疑った。
疑うしかなかった、まさか—— 約280人も殺されるなんて。
『…俺も正直驚いたさ、まさかってね。だけども、殺されたって言う事はあっちも本気だって示していると俺は思っている』
「つまりは—— “全面戦争”って訳か」
冷や汗がじわじわと出てきた後、少し寒気がした。
“全面戦争”…—— つまり互いに真正面からぶつかり合いながら殺して行く事。
まさか俺が生きている中でマフィアとヤクザの“全面戦争”が勃発するとは思わなかった。
ちょっと震えた俺に、構わず臨兄は『そう言う訳だね』と言う。
『…そのおかげで、ボスが大変お困りだ。そこで…急にだけど今日は学校を休んですぐに—— 幹部で集まろう』
「…分った、臨兄」
『じゃあ、王我の準備が出来次第迎えに行くから』と臨兄はそう言って電話を切った。
俺はすぐさま一応友達のあいつに電話を掛けて「あー…俺、風邪引いたから休むわ」と簡単な理由で言った後、携帯をベッドに投げ捨てすぐさま着替えに取り掛かった。
「チッ、昨日の何かは…—— これの事かっ !」
ギリッと歯音が部屋に響きながら。
———
「—— 朝、早いのね」
凛と透き通るような声が大きな部屋の中に響いた。
その声の持ち主は—— 制服を着た霜雪流空茂、彼女の声だった。
「あぁ、起きていらっしゃったんですか—— 流空茂お嬢様」
彼女に声を掛けられた優男で綺麗な紫色の髪の男はニコッと微笑んだ後、「今、起こしに行こうかと思っていましたのに…」と付け加えた。
彼は彼女、流空茂の執事—— 『陀跡累(だあと るい)』。
いつもニコッと微笑み、主人に従いそして—— ヤクザの当主である彼女の秘書。
そのニコッと微笑む彼をジッと見て、彼女は口を開いた。
「…それで、昨日はどうだったの—— 宣戦布告の宣言は」
その言葉にクスッと少し笑う。
「予定通り、約280人を全滅しました。ですが、幹部の顔が無かったのでどうやら昨日の彼等は幹部より下っ端のようです」
「…なるほどね、でも十分だわ」
そう言って彼女はカツカツ…と階段を上って行く。
その姿を見た累は一瞬驚いた顔をした。
「お嬢様…急にどうされましたか?もう学校に——」
「えぇ、学校には行くわ。…ただちょっとした忘れ物よ」
累の言葉の途中で彼女はそう言った後、その場を後にした。
その場に一人残された累は、彼女がいなくなった後—— 少し顔を緩める。
「…フフ、全てがうまく行っているな」
彼はそう小さく呟いた、とても小さく消えるような声で。
——真実には何か裏が潜み、待っている——
第11話「The back」