複雑・ファジー小説

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.4 )
日時: 2011/06/27 21:44
名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

学校も終わり夕日が映える放課後となる。
俺は元々部活は「帰宅部」だから帰ったって別にいい。
疲れた体を伸ばした後、いつも持ってきているガムを一個口に運びカリッと噛む。
ミントの優しい甘い匂いがふんわり漂う…と言うほうが正しいほど、このガムは優しい。
まぁ、辛口はあまり食えないからこのガムなんだけれども。
階段を一つ一つ下りてもう少しで昇降口と言う所で——。

「—— あ、あの !!」
「—— ?」

後ろから声がしたので振り向いた。
—— 普通の一般の素振りでは。
本当は気配なんて感じていた、だって俺幹部だしさ。
見ると俺と同じクラスの女子。
いつも物静かだけれども女子の中では一番友達率No.1の子だ。
その子は少し赤い頬をしながら俺を見続ける。
「何? 俺、これから帰るんだけど…」
まぁ、嘘なんだけどね。
今から俺とかの幹部達が集まる集会だから。
その子は少し「あ、その…少しの時間で、いいんです…」と焦った感じで言う。
その少しの時間が勿体無いんだよね、集会時間は厳守だし。
少し時計を見て考えてから「…少しなら良いよ」と俺は答える。
「…んで、何? 俺を引き止めて」
彼女は一旦目を逸らすが、何か心に決めたのか口を開いた。
「あ、あの…わ、私と—— 付き合ってください !!」
彼女は勢いよくバッと頭を下げる。
俺は嘘の驚いた顔をする。
もう何回だろうか、こんな事なんか3年間結構あった。
別に俺に惚れる要素なんてないのにな。
彼女を少し見続けて間を空けた後、口を開いて言った。

「ごめん、気持ちだけは貰うよ」
「—— !!」

バッとすぐに彼女は顔を上げる。
少し彼女の目尻に—— 涙が見えた。
少し俺は気まずいような仕草をして続けて言う。
「本当にごめん。…別に好きな人がいるからって訳じゃないんだ。ただ—— 君のような人は人生の内にとってもお似合いの人を見つけられるから」
「で、でもっ !!」
「…“でも”、何?」
そう言って彼女を見続ける。
さっきまで逸らしていた彼女の瞳は俺を捕らえて話さない。
彼女は自分が出る声を振り絞って言った。
「私はっ…。私は、貴方がいいんですっ !!初めて見た時から大好きでっ……私は…——」
彼女は溜めていた涙をボロボロとこぼす。
俺は—— 少し彼女の頭を撫でた。

「—— !」

ビクッと彼女の方が震える。
行き成り触られてビックリする人間は本当に普通。
本当に、人間はわかりやすい。
「……君の気持ちは良く分ったよ。だけどさ、俺よりも素敵な人がいると思うんだ。…正直、今の俺では君を幸せにする自信が無い。だけど嬉しかったよ—— ありがとう」
そう言った後、俺は手を下ろし階段を降りて行く。
彼女をその場に残して——。

———

俺は校門を出た後、近くのコンビニに寄る。
少し喉が渇いたからいつも飲むオレンジジュースを買い、集会の指定場所へと向かう。
その集会の指定場所の近くの道は人通りがとても少ない為大人の目を警戒する事もなく路地に入る。
その路地を真っ直ぐに進むと集会の指定場所のドアがあり、俺はドアを引いて中に入った。
入るとまだ来ていないのか部屋の中は真っ暗だから電気を付けると—— 先客がいた。
その先客の後ろ姿で俺はすぐに分った。
その先客はいつも部屋の隅でヘッドホンを耳に付けてゲームをしている。
バレない様に俺は気配を消しながら、そろりそろりと近付いて—— ヘッドホンを奪った。

「あっ—— !!」

奪い取られたのにすぐに反応して俺の方を見た瞬間—— その先客は驚いた。

「あっ…お、王我……さん」
「今回は少し早く来たんだね—— 巡兄」

ニコッと俺は先客、もとい同じ幹部の『崎染 巡斗』に笑った。
彼、『崎染 巡斗』は一見遠慮がちで誰に対しても敬語で喋るのだが、実は彼は二重人格である。
二重人格の彼は幾度か見たが凄く狂気と化し、戦闘になるとほぼ全ての人間が血の海に染まる。
ある意味危険な人物だが、彼は優秀な情報屋でもありこの前なんかは大手企業会社の裏をまんべんなく調べ上げシステム自体乗っ取った。
多分天性なのかは分らないが、大手企業会社のシステムに引っかからず逆に乗っ取ったのは彼の腕が凄いのだろう。
そんな彼が幹部にいる事は俺よりもとても自然的だった。
ちなみに今更だが、彼『崎染 巡斗』の事を俺は「巡兄」と呼んでいる。
その彼、巡兄は小さな声で「か、返して…下さい」とおどおどしていた。
俺はそれに気付いて「ごめん、ごめん。だって気付いていなかったしさ」と言った。
その言葉にまた小さな声で巡兄は「は、反省はしてます……」とまたおどおどした。
その巡兄にヘッドホンを返すとすぐに巡兄は耳にあててまたゲームを始める。
そんな姿に少しため息を付けながら近くのソファに座り、コンビニで買ったオレンジジュースを取り出し飲む。
オレンジジュースを飲むのは、確かに喉が渇いたけれど——。

    ——暇すぎるこの時間をリラックス時間にあてて休む為さ——

         第2話「Drink」