複雑・ファジー小説
- Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.42 )
- 日時: 2011/08/02 17:12
- 名前: 龍宮ココロ (ID: zLrRR1P.)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「うわ…高級のホテルじゃんっ !!」
乗ってから二時間後、集会場所に到着し降りた後すぐに俺は声を上げた。
凄く宿泊料の高く、前テレビで見たセレブや有名人しか泊まらないと言う超セレブホテルだからだ。
俺は確かにマフィアでのお金は報酬として貰ってある、けれどこんなホテルに泊まるほどの大金は持っていない。
凄く感動してちょっとキョロキョロと見ていると、臨兄は俺の姿に苦笑した。
「ふふ…騒がしいよ王我、少し気持ちを落ち着かせて。周りが迷惑だ」
「—— あ…」
俺の姿を見ていたセレブらしい女の人がクスクス笑ったのを見て少し恥ずかしくなったため、シュンと黙った。
だってねぇ…こんな所で集合だって聞いた事ない。
というか、来ただけで思いっきりなんか自慢出来そうなんだけど。
ソワソワとちょっと俺はする。
「おいで、王我。ここは広いから」
臨兄は優しい声でそう言ったのを俺は聞いて、迷わないように着いて行く。
フロントに入り、臨兄は小さな声で「ここで待ってて」と言うのを聞き俺は立ち止まる。
臨兄はその俺に「良い子だ、王我」とニコッと笑った後、フロント係らしい男の人に話しかけた。
俺は待っている間、少し周りをジッと観察する。
綺麗なシャンデリアに気持ちが落ち着くようなシンプルな色使い、そして眼を奪われるほどの庭が一望できるような造り…。
あまりに凄くて新鮮で嫌になるほど頭に焼き付けた。
…将来ここに一度泊まってみたいな、うん。
チラッと臨兄を見ると、どうやらちょっと手こずっているらしくまだ話している。
臨兄ならこのホテルとかセレブホテルに泊まっているんだろうな。
そう思っていた時——。
「坊や、ここは初めて?」
「—— !」
急な声にビクついた後、バッと振り返る。
そこには豹柄をふんだんに使ったセレブらしい女の人がいた。
「というか、マジで豹だろ」と言う位にふんだんに。
その人は少しクスッと笑い、口を開く。
「急に声を掛けてごめんなさいね、つい綺麗な坊やだったから」
「あ、い、いや…俺は別に」
少し遠慮がちで俺は返す、その俺に少しずつその女人は近付いて来た。
「遠慮しなくていいのよ、坊や今日は一人で来たの?」
「え、今…臨…いや、連れがいるので」
危うく途中で“臨兄”と言う所だった。
本当なら言ってもいいのだが、マフィアの幹部だけの掟で“『決して知らない奴に気安く仲間の名前を呼んではいけない、敵に情報を知らせる』”とあるからだ。
気安く名前も言えないのが本当に少し辛い。
「あらあら、そうなの」と言って女の人は笑った後、ズイズイと顔を俺に近づける。
「本当に綺麗ねぇ…坊や。その綺麗な坊やは—— 女の人にも興味があるのかしら?」
「—— !!」
女の人は自分の胸を俺の腕に押し付けてくる。
な、何だこの人…凄く寒気が一瞬に体の中を走ったぞ !?
普通なら男性としては良い雰囲気だろうけど…俺、そんなの知らないしなる気ないし !?
そんな俺に構わず女の人の顔が至近距離まで来たその時——。
「俺の弟に何か用でございますか、マダム?」
「—— !」
さっきまでフロントの人と話していたはずの—— 臨兄が爽快な笑顔でいつの間にかいた。
急な声に女の人は驚きもしないで「あらあら、連れの方が…お兄さんなのね」と少し妖艶な笑みを垂らしている。
そしてヒタッと、臨兄の右の片頬に女の人は触った。
「ご兄弟にして綺麗なのね、私の好みだわ」
「そうですか、マダム」
笑顔を一つも変えず臨兄はそう受け答えた後、少しクスッと笑った。
「ですが、俺達ご兄弟は貴方の好みであっても—— 貴方の物にはなりませんよ?」
「あらあら、物分りの早いのねお兄さん。もしかして女の扱いはお上手なのかしらね…?」
もっと女の人は妖艶な笑みを垂れ流した。
その女の人にゾクッとするのに、臨兄は何一つ動じていなかった。
「マダム、貴方の気品さには俺達ご兄弟は引き立てられないからそう言うのです。貴方は誰よりも気高く美しいんです。…だからこそ、お断りをするのです」
「—— !…貴方、なかなかね」
「いえいえ、マダムこそ。普通なら貴方の魅力の虜になってますね」
そう臨兄が言ってから少し時間が空いた後、女の人は「また会えるといいわね」と言ってどこかへと行った。
俺はいなくなったのを見た後、思いっきり脱力感が増えた。
「な、何だあの人…凄くゾクッとしたし…」
「あはは、そう言う世界なんだよ王我」
「遅くて悪かったね、ちょっと手間がかかったから」と臨兄はそう言って付け足した。
「本当に、臨兄がいなかったら俺…マジで死んでた」
「だから、悪かったよ王我。ちゃんと謝罪のお礼はしとくから」
ペロッとちょっと舌を出して臨兄は言った。
まぁ、臨兄の事だからお礼は高い何かなんだろうな…それしか思えないし。
それにしても…臨兄は本当に謎過ぎる。
さっきの女の人の言葉に一歩も動かずただ受け流し笑う…まるで女の人の対処法を元々知っているみたいだ。
「…本当、臨兄って凄いよなぁ」
ボソッと呟く声に少し臨兄は「何か言ったかい?」と言ってきたのにちょっと苦笑して「何でもない」と返した。
臨兄は左腕に付けてある腕時計を見て口を開く。
「そろそろ行こう、二人が待ちくたびれているだろうから」
「あ、うん。分っているよ、臨兄」
臨兄の行く方向に俺はただただ後ろで付いて行った。
——さぁ、気を引き締めよう…“全面戦争”への作戦会議だ——
第13話「Tension」