複雑・ファジー小説
- Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.45 )
- 日時: 2011/08/11 18:53
- 名前: 龍宮ココロ (ID: N/zMPjaj)
- 参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/
「—— じゃあ、今回の緊急幹部集会はお開きにしよう」
あれから3時間、俺達4人の幹部は色々相手の策の意図やこれからについて話し合った。
それぞれ互いに意見を尊重したり、反対したりと疲れる。
臨兄と巡兄の二人は情報収集も兼ねて策を考えるらしいため先に部屋を出て行った。
俺は手を振った後少し疲れたため、息を吐いた。
…だが、あの時一瞬自分の顔を青ざめた感覚があったのが俺は分った。
本当に血の気が引いた、こんな事は初めてだ。
—— 俺らにとって“不利な条件”だと言うのが。
だけど、それを飲み込まないとどうなるか分らないのもまた事実だ。
もしかしたら—— 俺達以外の一般市民に犠牲者を出すかもしれない。
だけども俺の勘では不利すぎる条件だ。
“他幹部と接触する事も禁止”と言う事はそれ位の力がある奴と戦う事になる。
「何か手立ては無いのか…」と考えていたら急に声が掛かってきた。
「何考えているんだ、この阿保。まさか、一人で戦うのが—— 怖いのか?」
「—— はっ…!?」
急な声にカッと顔が一瞬にして赤くなるのが分った。
俺に掛けてきたのはやっぱり嫌いなあいつでその顔はマジで真剣な顔。
だけどなんだよこいつ、急に言いやがって…!!
俺の顔をマジマジと見て、嫌いなあいつは口を開いた。
「図星だな、お前。表だけは幹部で裏は臆病者か」
「—— っ…!!」
ガッと嫌いなあいつの襟首を俺は掴んだ。
だけどもあいつは何も揺るがない、ただただ今の俺を静かに見ていた。
俺はその顔が一番大嫌い、嫌い、嫌い、嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌いキらいキらいキらいキラいキラいキラいキラいキライキライ——。
俺はそう思いながら嫌いなあいつを睨み続け、強く言葉を吐いた。
「—— 知ったような口で言うなっ !あんたに何が分る…あんな不利な条件は俺達『ゴッド・コードウルフ』を楽に倒せるような方法なんだぞっ !?」
「…あぁ、そうだな。で、それが何だ?…そんな条件に心揺らいでいる臆病者幹部さんよ」
カッと一瞬怒りの気持ちが高ぶって—— 嫌いなあいつを殴った。
殴った拳が少し痛む、嫌いなあいつは少しモロに食らって少し咳き込んだ。
「俺は臆病じゃねぇよ、ふざけんなよ…あんたっ !」
俺は息切れをしながら嫌いなあいつに叫ぶと、あいつは息を整え一瞬にして—— 俺の襟首を掴み、俺は壁に叩きつけられる。
「—— っ…!」
本当に一瞬の事で、背中に痛みが今更来た。
目の前にいる嫌いなこいつは俺を睨みつけた。
「…そんな臆病者が振るった拳、俺には全然効かねぇよ。元自衛隊をあんまり舐めていると—— 幹部だろうが殺すぞ?」
ゾクッと一瞬、何故だか嫌いなこいつに怖気づいてしまった。
怖い、怖い、怖い、怖い——。
恐怖が俺を包み込んで行くのが分る、体が心が…こいつに怯えて震えていた。
「—— あっ…あ…っ」
声も出せない、自分は—— こいつに怖気づいて何も出来ない。
震えて顔をもっと青ざめる俺を見た後、こいつはやっと口を開く。
「やっぱり、お前はまだ青二才な奴だな。こんな奴をボスはよく幹部にしようとしたのか俺はさっぱりだな」
「—— っ !!」
一瞬、俺の首筋をこいつは軽く舌で舐めてきやがった。
何も抵抗出来ない俺を—— 少し嘲笑って。
「臨音も臨音だ、こんな奴をよく弟分にするもんだな。躾も何もされていないこんな甘ちゃんで臆病な子犬を。…たかが一人で戦うのに心細いなんてな、いたぶり方や殺し方なんて色々教わっただろう?」
「……」
確かに教わった、本能として。
マフィアに入って「アソシエーテ(準構成員)」としてなったすぐに同じ「アソシエーテ(準構成員)」同士紛争を起きたりした理由も—— 本能でのいたぶり方や殺し方を覚える為だ。
そうして実践を積みより多く殺せば名が上がる。
俺だって3年間そうして来た。
「…実践が違いすぎるんだよ、この阿保。だからすぐに怯えちまうんだ」
スルッと嫌いなこいつは手を離した。
俺はズルズルと下にペタンと座ってしまった。
俺は息が少し荒いのに気が付いて整えようとする。
そんな俺を真正面に嫌いなあいつは静かに言った。
「…確かにお前は優秀だろうな、3年でこの幹部に上がれたんだからよ。だけどな、怯えるような臆病な奴だと知った今、優秀なんて当てはまらねぇ使えない阿保だ。躾もされていない馬鹿な子犬だ、そんな奴—— 俺は絶対に認めねぇよ。とっとと、幹部辞めた方が身の為だ。…辞めねぇのなら、心を流されず真っ直ぐ自分って奴を考えろ」
「—— !」
嫌いなあいつは一旦ため息を付いて、苦虫を潰したような顔をして部屋を出て行った。
俺は動きもせずただ嫌いなあいつのその言葉に圧倒されるだけだった。
俺は自分が幸運に満ちてここまで来ていた—— 臆病な心を持ちながら。
だけど、嫌いな…いや紅真の言葉は俺の心の何かを動かすほどだ。
「…はは俺って意外にもチキン野郎…だったんだ。…情けないなぁ」
呟く言葉は誰にも聞かれない、だけど自分の心には響いて聞こえる。
自分の心は確かにとても臆病で怖くて小さくて——。
それでも“生きたい”と思う気持ちは増すばかり。
「あー…あいつ、なんだよ。胸糞悪いほど俺の心…読みやがって」
そう言っても、俺は少し笑みを浮かべていた。
——もう…“臆病で躾もされていない子犬”なんて絶対言わせねぇように強くなってやる——
第16話「Heat」