複雑・ファジー小説

第三話 『不意打ちをくらったのは紛れもなく俺だった』 ( No.6 )
日時: 2011/08/19 10:43
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

ピーンポーンパーンポーン

『一年二組の篠原慎君、至急、校長室に来てください。繰り返します、一年二組の篠原慎君、至急、校長室に来てください。』

「……はい?」
 俺は教室の天井の四隅に設置された白いスピーカーを、口をあんぐりと開けて、見つめていた。
 校長室?なんで?なにもしてないんだが。
「おいおいおい、シノ、お前、何したんだよ?オレみたいになりたくてナンパでもしたのか?」
「違う」
「シノっちってば、宮城のマネなんかしても楽しくないってあれほど言ったのにさあ?」
「違うって!」
 どんどん話が悪化していっているのは、錯覚、だと信じたい・
「篠原君、校長室に呼ばれるなんて、只事じゃないですよ」
 霧島さんが、真剣な顔で指摘してくる。
 確かに、学校で問題を起こしてもいないのに呼び出しをくらうとは。
 こめかみに手を当てて考える。でも、答えは出やしなかった。
「かといって、このまま放っておくわけにもいかないし」
 結局、俺は席を立った。椅子を元の位置に戻す。
「行ってくる」
 そう言い残し、教室を出ようとした。
「待て待て」
 が、蓮に肩を掴まれ止められる。なにか企んでいるな、コイツ。
「俺もついて行ってやろう」
 予想は的中。明らかに行きたくてたまらないといった顔は、俺のモチベーションを思いっきり下げた。思わず溜め息をつく。
「断——」
「じゃあ、あたしも行く」
「——る、って何を言ってるんですか、水野さん?」
「だって、気になるし、なあ燈兎?」
「私はこのまま一人残されると、また心拍数上がって倒れちゃうから、柚子と一緒にいる」
 胸に手を当てて、自分の性格について深刻に語る、霧島さん。
「ほら、燈兎もこう言ってることだし!」
 
 水野さんに話の行き先を誘導されて、自分は嵌められたことに気づいたのは、四人で校長室へと歩み出した直後だった。