複雑・ファジー小説
- Quiet Down!! 第一回人気投票、結果発表! ( No.120 )
- 日時: 2011/08/01 15:12
- 名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)
☆プロローグ☆
「皆様!お早うございまひゅ噛みましたお早うございます!私、霧島燈兎と申します!どうぞよろしくお願いいたします!」
霧島さんは、爽やかな笑顔を浮かべた。
「えー……と。パーソナリティーの水野柚子。よろしくな」
若干、戸惑いながら、頭を掻く、水野さん。
「そもそも、なんで朝から、こんなスタジオに連れてこられにゃいかんのだ」
水野さんは不機嫌そうだ。「第一、なんでドラマCDなのに行動まで入ってんだよ」と空を仰ぐ。
「なんか、第一回、人気投票の結果発表があるみたいだよ?ちなみに、行動まで入っているのは、皆様に分かりやすくするため」
「待ってください!霧島さん!」
俺は話を止めた。途端、二人に眉を寄せられる。一瞬、言葉に詰まったが、俺には、『使命』というものがあるので、言わなければならない。
「なんで主人公、俺なのに、パーソナリティーから外されているんですか!」
「知らんよ、シノっち」
水野さんは深く溜め息をつき、腕を組んだ。
「まーまー、落ちつけよ!シノ!パーソナリティーにお勧めの人を俺が上層部に、打ち明けたんだ」
「てんめえええええええええええええええええええええええええ!」
お前か!最悪だ!最低だ!鬼畜!
俺は蓮を絞め殺さんばかりに、奴の襟を掴んだ。蓮のどや顔はいつみても、腹が立つ!
「ねーねー。早く結果発表いきたいんだけどー」
「宮城君、貴方のせいで、長引いているんですが。はい、はっきり言って、邪魔ですね」
女の子組は、半目になりながら、話の展開を急かした。
男子組の、俺らはと言えば……五分以上、頭を下げることとなったのは言うまでもない。
☆人気投票☆
「はい!では、皆さん!お待ちかねの人気投票、発表です!と、その前にお知らせが……」
「なんですか?」
霧島さんは、俯く。
「実は、最下位が二名いるので、全三位までとなります」
最下位が、二名。か。俺は顎に手を当てて、考え込む。つまり二分の一の確率で、最下位……。
「ふっ。オレは、カッコいいから、心配ないな!」
コイツの決め顔を見ると、ウザくなるのは何故なのだろうか。
「これ以上、話をややこしくしないで!怒るわよ……!はい!では、二位から発表しますね!」
辺りがぴたりと静まり返った。無機質の白い封筒が開かれるのを、ただ、見守る。
「第二位は……三票で宮城君!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
隣で雄叫びが上がる。右手で大きくガッツポーズを作る、蓮を横目に落胆した。
「全国の女の子!ありがとなあああああああああああああああああああああああ!」
「五月蠅い、黙れ。宮城君」
「すみません。調子に乗りました」
喜びすぎた蓮は、霧島さんに正座させられていた。まあ、自業自得と言えなくもない。何故ならば、喜びの声が上がる反面、落胆の声が上がるときもあるのである。少しは人の気持ちも考えやがれ!
「オレは……最下位にならなかったことを、誇りに思う!」
「蓮……その口、縫ってやろうか!何針がいい?」
「止めるのは、もう無駄ですかね……。続いて、第一位の発表です」
俺は霧島さんの持つ、白い封筒を見つめた。あそこに、俺の運命が……。と思うと、胃がキリキリする。
「第一位は、四票で私です!」
「「…………………………」」
「皆さん!有難うございました!って、あれ?どうしたんですか、柚子に篠原君。そんなに絶望この上ないといった顔をして」
「だって……ねぇ?」
「偶然、だな。水野……オレハモウダメダ」
そう言い残し、俺は意識を失いかけた。敬語も外れている。
「第一、 シノの場合、目立ちたくないんじゃねーのかよ」
珍しく読者目線のツッコミをする蓮に、弱弱しく返す。
「それとこれは別……。誰だって、人気投票で、一位を勝ち取りたいだろ……」
「私、素直に喜べないんですが……。こんな雰囲気になるはずでは……」
霧島さんは、戸惑って、しばらくパーソナリティーとしての責務を果たすことが出来なかった。
- Quiet Down!! 第一回、人気投票、発表! ( No.121 )
- 日時: 2011/08/01 18:40
- 名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)
☆篠原慎☆
「次はなんですか……」
「私達宛に感想が届いているので、いくつかご紹介したいと思います!」
重々しい雰囲気を放つ俺と対照的に、ポジティブに生きる、霧島さん。だから、人気投票でも、一位を獲ることが出来たんですか……?
「まずは、篠原君から」
「俺の番……」
「ペンネーム、『狒牙』さんから!『可哀そうな主人公』へ」
ちょっと待って!俺は話を進めようとする、霧島さんを引き留めた。
「なんで『篠原慎』でエントリーしてるのに、『可哀そうな主人公』なんですか!狒牙さん!」
「私に聞かれても……」
「きっと、哀れな役回りのシノっちに同情してるんだよ。」
水野さん、心の傷口、抉ってますよね?
「どうやら、狒牙もお前と同じポジションにあるらしいぞ?」
「え、そうなの?」
本当だ……。苦労人……。お互い、大変ですね……!
「しかも『ドンマイ!そのうち、いいことあるって!』だとよ?狒牙って、良い奴だな!」
「このポジティブさは、見習った方がいいよ?シノっち」
「はい……」
俺は項垂れた。
狒牙さん……人生の目標にさせていただいても、いいですか……?
そう問いたい。
☆宮城蓮☆
「続いて、宮城君」
「おぉ」
「ペンネーム、『コーダ』さん。有難うございます。この方が、一番最初に、人気投票に参加してくださったようですね!」
霧島さんは、満面の笑みを浮かべる。どうやら、パーソナリティーに早くも慣れてしまったらしい。
「『私と似ているからでしょうか?変態男は大好きですよ!』とのことです!」
「コーダさん!ありがとな!オレと似ているだなんて……ふっふっふっ!もしや縁が……!『変態男』って言葉は、褒め言葉として受け取っとくよ!何故ならば、オレはポジティブだからな!」
蓮が横で胸を張って、喜ぶ姿に、俺を含む三人が引く。
「宮城、変態話にでもさ、コーダと花咲かせたら?」
水野さんは、手を挙げて、意見を述べた。
「ああ、もちろん!近いうちにしてみたいもんだ!百パーセントのオレンジジュースを飲んで、語り合いたい!」
「……柚子、宮城君、読者様に敬称を……!」
「いいじゃんか!燈兎!この一時を、楽しく過ごそうぜ」
「楽しく過ごしたくても、人気投票が最下位と知って、どうしろと……」
俺は机に突っ伏しって、落ち込んでいた。
「でも宮城君、ペンネーム『王翔』さんから、『ちょっと表へ出てくれ』と書かれていますけど。」
「……もしや……!」
「王翔さん、コイツを表へ出したら、まず最初に思いっきり殴ると、スッキリしますよ」
周り二人も頷き、賛同している。
「ペンネーム『ベクトル』さん、『こういう人が一人いたら、場が楽しくなる!!』とお便りを貰いましたが。見かけに騙されてはいけません。」
「そうですよ!ベクトルさん!コイツ、真面目にウザいから!」
真実なので、熱弁を振るう、俺。だって、アイツ……社会人になったら、一番初めに、世の中から削除されそうなくらいだし……。
「『その性格、最高だから、大事にしろよ』だってさ!宮城って、そんなキャラだったっけ?」
「いや、みっちょん。実はね、上層部から、オレ、嫌われ者キャラとして、扱われていたらしいんだ」
「当然だろうな」
俺は、肩をすくめた。
蓮に順位を負けているのだから、しばらくは、無視しようと決める。
- Re: Quiet Down!! ( No.122 )
- 日時: 2011/08/01 15:19
- 名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)
☆水野柚子☆
「おっ、やっとあたしの番か」
水野さんは開始早々、ニヤつく。
「って言っても柚子。柚子と篠原君は、一票だからね。すぐ終わっちゃうよ?」
「そんなこと言うなよー。大事なのは数じゃなくて、気持ちだぜ?ほらっ、読んで」
「ペンネーム『ゆきりん』さんから!『パワフルすぎだよ!もうさいこうっ!』とのことです!」
「確かに……水野さん……パワフルだもんなぁ……」
「いいんだよ!このパワフルさが売りなの!」
俺は目を見開いた。そうだったのか!全ては計算?
「シノっちに負けたくないしね」
そのウィンクはなんなんですか。
「嗚呼、ゆきりんとこの学園の衝撃的事実について、笑いあいたい……カフェで……。その時は、メロンソーダが良い……」
「結構、子供っぽいんですね」
「バカにしてるの?シノっち」
水野さんの視線に、耐え切れず、思わず、あらぬ方向を見つめる、俺だった。
☆霧島燈兎☆
「私宛に、お便りが届いております!嬉しいです!」
霧島さんは、四通のお便りを、嬉しそうに眺める。
「じゃあ、今度はあたしが読む」
「うん!お願い!
水野さんは、お便りを受け取り、封を開けた。
「えっと」
「最初は敬称、つけてね」
「分かった分かった」
水野さんは、咳払いをする。
「ペンネーム『雅』さんからだ。『わざわざ噛みましたと言うのが面白い!』だって。」
「……理由はどうであれ、噛んでしまったことに対する、申し訳なさから、言っているんですよね」
霧島さんは、なにもない空間を見つめた。
「霧島さん、この雅さんは、気をつけた方がいいですよ?『本当は……ゲフン』って、危なそうです」
俺は優しい口調で、指摘した。可能性を考えて……だな。
「全体的に、自分と似ている、ってお便りが多いな。燈兎宛のお便りは。ペンネーム『秋原かざや』さんは、燈兎と同じく、会社でよく噛んでしまうらしい。」
「噛んじゃう子って、可愛いよね!」
「ハートマークを出しそうな雰囲気は、止めてください!私と同じ人はいるんですね!共に、頑張りましょう!」
霧島さんは、胸に手を当て、希望に満ちた瞳で語った。
「ペンネーム『@美凪』さんからは、『めっさかわええ』……」
「うん!@美凪さん、気が合うね!霧島さんファンクラブに入らない?書記、どうかな?」
無言で俺は、蓮に制裁を加えた。詳しく言うと、拳骨で蓮の頭を殴った。
「そのファンクラブ、今すぐ解散させろ」
「えー」
蓮は大袈裟にブーイングをする。コイツの瞳を見る限り、解散させる気はさらさらないようだ。
「ペンネーム『鹿瀬』さんから、『私もよく噛みます』ってお便りが来てるぞ」
「同志がこんなにいらっしゃったとは……驚きです!頑張っていきましょうね!」
霧島さんの笑顔は、このドラマCDのイメージアップに貢献した。
☆エピローグ☆
「九名の人気投票、参加者の皆様!有難うございました!第二回人気投票は、八月一日、つまり今夜の十一時からです!新たにエントリーする人も!」
「コメントが特徴的だと、次のドラマCDにお便りとして、登場するかもな!」
「目立ちたくないのと、人気投票、一位を獲得することは別の話です。だから……次こそは……」
「オレ宛のラブレター、待ってるぜ!」
「では、本編でお会いしましょう!」
「「「「有難うございました!」」」」