複雑・ファジー小説

三十一話『計算』 ( No.138 )
日時: 2012/03/11 21:52
名前: 水瀬 うらら (ID: G0MTleJU)

「あーあ」
 屋上の扉の隙間から、二人の幸せそうな顔を目にした私は落胆した。
「上手くいくと思ったのにぃ」
 軽く呆れるが、二人が気付くはずもない。
なにあの握手。私を馬鹿にしてんの?
 天気まで味方につけちゃってさぁ? 感動系ドラマのつもりなのわけ?
 私は屋上の扉をそっと閉めた後、両目を手で覆い隠し、急に笑い出した。そして、年季の入った埃まみれの木製の手摺りを握り、亀裂の入った階段を軽快な足取りで降りていく。
「つまぁんなぁぃ」
 水野柚子は錯乱して自殺する予定だったのに。霧島燈兎に至っては、なんであのタイミングで来ちゃうかなぁ。「もう少し早く様子見に来ればよかった」と嘆く。嘆くといっても、その瞳に涙はない。
 上手くいかなかったら、もうどうでもいい。そんな感じなのか、笑顔だった。が。
 ふと階段を下りていく足を止め、振り返る。頭の中に鮮明に映し出される、虹と笑い声。
 眼光が鋭くなる。まるで血に飢えた獣のように。その瞳は静かに、怒りと殺意を宿していた。

「ちゃぁんと思い通りに動いてくんないと……殺しちゃうよ?」