複雑・ファジー小説

第九話『誰かが言った、それは馬鹿のすることだと』 ( No.39 )
日時: 2011/07/09 21:06
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

 それを見ていた、水野さんは、にやっと危険な笑みをする。そして、水野さんは、自身の腕を霧島さんの肩に回して、こんなことを言い出した。
「なぁ、燈兎よ。面白いネタでも教えて進ぜようか?」


「その芝居がかった様子は危険信号ね」
 霧島さんが本を勢いよく閉じ、その額から、冷や汗が、やや浮き出ているところを見ると、水野さんの行動には注意をした方が良いだろう。
 辺りに緊張が張り詰める中で、水野さんは至って軽い口調で言い出す。
「実はな、シノっちの話なんだけど、」
「うん」

「告られたらしい」

「……………えええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
 霧島さんが卒倒しそうになるのを、慣れた手つきで受け止める、水野さん。
 ……水野さんは、本当に毎回、霧島さんを翻弄しているなぁ……。
 いや、そんなことを内心、語っている場合ではない!
「なな、なにを水野さん!俺は男には、男に告白されてしまった訳ではそのっ、つつつつまり男には告白なんてされてないですから!」
「分かりやすいね、シノっち。見てて飽きないよ」
「お前、男に告白されたのかよ!シノ、まさかそんな才能を秘めていたとは、知らなかったぜ!」
 何故、蓮の顔が綻んでいるのかだなんて、もう聞く気すら起きない。
「で、男の子に、こ、告白、されたのは本当なんですか……?」
 霧島さんに上目遣いで見つめられてきたため、俺は思わず、
「……は、はい。」
 と、力強く、答えてしまった。だって、じじじ事実だし。
「おおおお、シノ、オレはお前を見直したぞ!そうかそうか、このオレがあまりに女の子にモテモテで羨ましかったから、男子にモテることで、オレに勝とうとしたんだなっ!だが、それは余りに無謀すぎたぜ、友よ!」
 手の平を返したような、この、さっきと打って変った態度はなんなんだろうか。さっきまで、『友のことを成敗するのが、この世のためであり、オレの使命だ』みたいなことを、叫んでいた奴にはとても、見えなかった。
 思いっきり、抱きしめられても、俺はどうリアクションをすればいいのだろうか?
「んー?シノっち、何言ってんの?」
 水野さんが目を点のようにして「よいしょっと」椅子から飛び降りた。背伸びをしながら、のんびりと言う。

「シノっちは女の子に告られたんだぜ?」

「「「…………………………………………は?」」」

 俺は尋常じゃない早さで瞬きをした。
 蓮達は、口をあんぐりと開けていた。蓮に至っては、白目を剥いているような。
「みっちょん、もう一回、言ってもいいかな?………………は?」
「あーあー、やっぱりね。途中から、可笑しいと思ってたんだよ」
 水野さんは苦笑した後、ゆっくりと、俺の元に歩み寄ってきた。
 そして、頭一つ高い、俺を見上げてきた瞳には、呆れが混じっていた。
「さっき、シノっちに告白してきた子はね、吾妻或あがつまあるて言う、列記とした女の子さ」