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複雑・ファジー小説
- 第十話『人は、時として鬼神へと変貌する』 ( No.40 )
- 日時: 2011/07/11 22:03
- 名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)
「…………女の子?」
「そう、女の子」
俺がそう聞き返しても、返ってくるのは、確信を持った、水野さんの頷きだけだった。
「え、或ちゃん?来てたの?」
「燈兎さん、その子、知り合い?」
「……えぇ、彼女は私の中学生時代の後輩でね」
非常に不味い展開だ。
しかも、あの霧島さんが、蓮に話を振られても、表情を変えないとは。相当、真剣ならしい。
「あの……ていうか、なんで水野さん、知ってるですか?」
「それはねぇ、告白現場をばっちり見ていたからさ!」
親指を立て、スマイルを浮かべられても……。それって、一種の開き直り……?
「……みっちょん、ゴシップ大好きそうだしな。意外じゃない……」
「あたしはね、ドラマ的、衝撃な展開がリアルで行われているところを、激写せずにはいられないんだよ」
さらっと、とんでもない趣味を言ったぞ!この人!
俺の顔は、若干、血の気が、引きつつあった。
「撮ったんですか、あれ」
「そりゃあ、もう、ばっちりと!」
今や水野さんの笑顔が、俺には凶器かなにかにしか見えない。
「みっちょん、その写真、見せてくれる?」
「いや、お前は絶対、見るな!今のお前は完全に人を殺しそうな眼つきをしている!」
恐らく、いや、完全に、俺が女子に告白されたことに対して、激しい憎悪の炎をオーラとして、ほとばしらせている、蓮。
止めなかったら、殺されるだろうな。
俺は自分の人生を他人に勝手に終わらさせたくはないので、蓮を抑えにかかった。
「……大丈夫だぜ?シノ、そこまでバカじゃねえよ。俺は」
「そうなのか?」
「ああ。ふっ、必ず仕留めてみせる」
うっかり、拘束を緩めた俺が馬鹿だったよ!
一見、カッコいい台詞を言っているようで、実は、殺人予告をしている蓮が、最近、
本当に俺の幼馴染なのか、疑いつつ、あった。
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