複雑・ファジー小説
- 第十一話『外見だけで判断しては、いけない』 ( No.57 )
- 日時: 2011/07/15 21:56
- 名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)
「何で、アルちゃんは、ここにいたんだろう!もしや、オレのた」
「黙れ、この変態が」
霧島さんは蓮を一瞥する。その光景を見て、水野さんは楽しそうに口笛を吹いた。
そして、語り出す。
水野さんの話によると、或さん達が来たのは、上級学校訪問に向けての下見なのだそうだ。……正直、この曲者学校が『上級』という名に相応しいとは、到底、思えない。
そう率直に伝えたら、水野さんは「あたしも、そう思う」と苦笑を漏らした。
「……あのじいさんの仕業だったりしてな?」
「おっ、当ったり!宮城!」
「みっちょん、オレ、ボケようとしたんだけど」
気まずそうな顔の蓮。ボケ役というものは、色々、大変なんだろうな。
「実はね、或達、あの校長の『お気に入り』らしいんだよ」
「え?」
俺は首を傾げた。お気に入り……?
「校長は或達を、来年の新入生として迎えるべく、今、猛アピールを仕掛けてるのさ」
「もう来年のことを、考えてるんですか!」
思わず叫んでしまった。何なんだよ!あの校長先生は!
春なんですけど?入学式、直後なんですけど?
どうやら、校長先生の辞書の中には、『時間』という概念はないらしい。
「篠原君。校長先生は、凄い策略家なんですね!」
霧島さん、校長室に向かって、尊敬の目を向けるのは、きっと勘違いか何かだと思います。
「ちなみに、或は双子の妹で、兄は廻」
「廻君。オレは心底、君のことが羨ましくて仕方がない!」
「蓮、警察呼ぶぞ」
「すいません。オレが悪かったです」
謝るのなら、最初から危ない発言はよしてくれ。俺は肩を竦めた。
ていうか、廻君が兄だったのか。てっきり、或さんが姉だと……。人は見かけにはよらないのだと、改めて実感した。
同時に、あることを思い出す。
……今度、或さんに会ったら、謝らないと……。
謝って許されることではないような気もしたが、俺はそう心に決めた。