複雑・ファジー小説

第十三話『人に囲まれた、人生って……夢のスクールライフは?』 ( No.62 )
日時: 2011/08/13 21:57
名前: 水瀬 うらら (ID: JNIclIHJ)

一番最初に目に映ったのは、白。
無機質な天井だった。
 碁盤の目のように、一定の割合で区切られたところを、しばらく、ぼんやりと見つめる。
 辺りには、薬の独特の香りが漂っていた。
 自分は保健室にいるのだと、気づく。

「篠原君!一体、どうしたんですか!倒れるだなんて!」
「あたしは、予想はしてたけどねー」

 俺の横たわっていたベッドが大きく揺れ、一瞬、酔いそうになった。
 挨拶をしようと、体を起こすが、直ぐ、水野さんに止められた。
「ったく、シノっちー。健康管理はちゃんとしとけ、って世間ではキツく言われてるのにさー」
「言われてないです」
 これだからシノっちは、と水野さんは俺の足が埋まっている辺りの布団を、軽く手で叩いた。
「あーあー。同級生になって、大分、時間が経ってんだからさ、『水野さん』とか、敬語はなしにしようぜ?なんか気まずいし」
 俺が対応に戸惑っていると、水野さんは、優しく笑いかけた。
「水野、で良いよ」
「……水野さん、俺はどうしたんだ?」
 さすがに敬称は外すことが出来なかった。
 一瞬、水野さんは残念そうな顔をした。
「あーなんか、文字通り、ぶっ倒れたらしいなあ」
 水野さんは、蓮を証人の如く、見た。その蓮はといえば、俺のベッドから一メートルほど、離れたところで、壁に寄り掛かっていた。口が開くのが見えるが、表情は読み取れない。
「ったく、これだから、シノは嫌なんだよ」
「それが幼馴染にかける最初の言葉か!」
 目を見開いて驚きつつも、どこか心の中では、分かっていた。だって、それでこそ蓮だろ。
「オレは、正直なぁ、女子以外はどうでもいい!」
「それが本音か!」
 飛び起きようとするが、今度は、近くのパイプ椅子に腰を掛けていた霧島さんに押さえつけられる。
「安静にしてください。熱があったようですから」
「すみません、霧島さん」
「いいんですよ、気にしないでください」
 ……霧島さん、本当に優しいですね……どっかの馬鹿とは大違いだ。

「なぁなぁ、君達さ!」
「ん?」
 目を擦って、周りを見渡すと、薬品棚の前にある白いデスクに両手で頬杖をついた、三十代前半の女性がいた。ここの、保険医だろうか。赤みを帯びた、髪を腰まで伸ばしている。皺一つない、白衣を着ていた。
 女性は目を輝かせんばかりにして、開口一番、問うた。

「青春してるかい!?」