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複雑・ファジー小説
- 第十七話『帰り道、ふと零れた本音』 ( No.84 )
- 日時: 2012/03/13 16:30
- 名前: 水瀬 うらら (ID: G0MTleJU)
「いい加減さぁそのやつれた顔もう止めにしようよシノっち」
「……」
水野さんの言うとおり、俺は思いっきり疲れたような顔をしていた。
只今、学校の帰り道である。
住宅街の狭い路地に君臨する風化真っ最中のボロいブロック塀の内側で、民家の柿が生っていた。
風雨により錆びた電信柱。その全てに淡い橙の光が差し込み、綺麗な色合いを出している。
「オレでさえ忍先生に対する熱き青春から解き放たれて前向きに生きていこうとしてる真っ最中なのに。なんだよその酷い有様は」
そんな中、背中を丸めとぼとぼと歩いている俺は、この美しい景色の汚点とも言えるだろう。
「青春から解き放たれたって言いますけど、それって只の負け惜しみですよね? 自分を正当化しようとしてません?」
「なんでオレは燈兎さんに目の敵にされてるのかな? 本当に不思議なんだけど」
隣では、少し足早に歩く霧島さんの姿が。どうやら、蓮のことは無視すると決め込んでいるらしい。
「蓮、人生はそれほど甘くはないんだ」
「なにおぅ!そんな運命、オレがぶっ壊してやるよ」
親指を立て、にんまりとポーズを決められる。
「……お前が本当に運命を変えることが出来たなら」
ぼそりと言った俺の一言に、蓮はぽかんと口を開けていた。
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