複雑・ファジー小説

第十八話『家族?それ、マイペースな団体のことですか?』 ( No.85 )
日時: 2012/03/13 16:50
名前: 水瀬 うらら (ID: G0MTleJU)

「着きました」
「お」
 水野さんが感嘆の声をあげる。別に凄くもないんだが。
「一軒家なんですか」
 目を丸くさせる霧島さんの言う通り、俺の家は一軒家だ。ベージュ色の普通の二階建てである。この大きさからして団体で住んでいることを推測するのは止むを得ないのだが。
「両親と弟は海外に旅行中だから、今は俺一人」
「弟さんがいらっしゃるのですか。意外ですね」
「あ、そうですか?」
 素直に言われ、瞬きをした。
「シノっち、その旅行っていつから?」
「入学式の直後」
 一瞬、辺りが静まり返る。それが普通の反応なのかもしれない。
 俺の両親は実に自分勝手な人で、弟が「せめて入学式の後に行こう」とすがりつかなかったら、上機嫌でそのまま旅行に行くような人達であると断言していい。もちろん手土産を持って帰ってきたりはない。
「そんな身勝手ファミリーの長男です」
 何故か真面目な顔で決め台詞を言いながら、傷だらけの鍵を鍵穴に差し込んだ。