複雑・ファジー小説
- Re: 獣妖過伝録 ( No.164 )
- 日時: 2011/11/30 07:36
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: dCkmB5Zo)
〜不埒な者たち〜
「あ〜……なんだい?これは……」
深い溜息をして、とても呆れた表情を浮かべる女性。
頭には灰色の2つの耳が生えており、とても細い1本の尻尾も生えて
いる。
黒色の髪の毛は、肩までかかるくらいの長さで、前髪は右目を隠すくらい長い。
だが、左目の輝く灰色の瞳はとても力強い印象を与える。
やや暗い赤色の着物を着用していて、右手には十手(じって)を持っている。
陽気そうな歩き方の中に、どこか争いごとを何度も経験している雰囲気を漂わせる。
「こんなに不正をやられると、ちょっと面倒だなぁ」
彼女が見たもの——————
犬と狼以外の種族が刀を持っている光景。
1人ならまだしも、それはなんと20人も居た。
この世は、武士しか刀を持つことが許されない。それ以外が持つと、重たい罰が下される。
しかし、このように大量の人が刀を持っていることは前代未聞である。
「さすがに、これはあたい1人だけじゃ止められなさそうだなぁ……」
女性は持っている十手を懐にしまう。
——————敵として見られたら、後々困るからだ。
「最近、刀を持ちたがる輩が多い気がする……まさか、ねぇ……」
細い尻尾を動かしながら、女性はこの場を後にする。
刀を持った大量の者たちは、奇声をあげながら自身の刀を振っていた。
○
「思ったけど、なんで武士しか刀を持ってはいけないんだ?」
街道を歩きながら、一言呟く先程の女性。
どうやら、武士しか刀を持ってはいけないことに、やや疑問を持っていた。
「まぁ、決まりと言ってしまえばそれまでだけどさぁ……かならず、根っことなる理由があるはず」
耳を動かして考える、鼠女。その表情はとても真剣そのものだった。
武士と刀の関係。その起源——————
改めて、考える時がきたかもしれない。
「古い書物とか読みたくないけど……気になるし、良いかな」
鼠女は懐から小さな巻物を取り出す。
その紙には、大量の名前が書いてあった。
「古い書物を扱っていると言えば……やっぱり、あそこなんだよねぇ」
彼女は口元を上げて、軽快に街道を歩く。
鼠女の目線には、——————という文字が映る。