複雑・ファジー小説

Re: 獣妖過伝録 ( No.166 )
日時: 2011/11/06 11:05
名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: OROHjpgn)

            〜禁断の境界線〜


 ある猫男は村の中で見た。
 犬の男性と鳥の女性が一緒に仲良く歩いている所を。
 それは、誰がどう見ても友という文字を超えているような雰囲気。
 お互いの手を握り合い、それは決して離れることはなかった。
 猫男は口元を動かして、唸る。
 この世は異種族同士の恋は認められない。生まれてくる子供がおかしくなるから。
 必ず同種族でしか、愛を実らせることはできない。
 とても、肩身が狭い恋だ。
 だが、人々はそれを了承する者は多い。生まれてくる子供を思うと自然とそうなるからだ。
 自分の子供が、自分の孫が変な種族の血が入っていたら当然嫌な気持ちになる。
 猫男はそんな犬と鳥から目を離す。
 すると、今度は狐の男性と鼠の女性が歩いているのを見た。
 また、異種族同士の関係。猫男は思わず口を開けてしまった。
 この光景を国のお偉いさんが見たらどう思うのか、そう頭の中で考える。
 おそらく、問答無用で死刑。良くて島流し。
 下手すると、放火や殺人よりも重たい罪。

 ——————いくらなんでも、それはおかしい。
 そう思うのはごく少数の人々。異種族に魅了された人々の意見。
 周りからは冷たい目線。中には刀を抜く者も居る。
 それでも、強く愛を貫く2人。猫男は自嘲(じちょう)した表情を浮かべる。
 だが、その表情はすぐに柔らかくなる。
 頭の中にある人物が思い浮かんだ。
 とても美人で黙っていれば男が寄ってくる狐の女性。しかし、口を開ければ罵声ばかり飛ばす。
 その口には狼独特な犬歯。見た目は完璧狐だが、一部は狼。
 そう、自分はある狐狼(ころう)女と仲が良い。
 猫男は再度、異種族の男女を見つめる。
 この2人から生まれる子供はどんな子供なのだろうか。将来はどうなるのか——————

 そして、同時になぜ異種族の恋が許されないのかという疑問が生まれる。
 本当に、男女は同種族にしか想いを寄せないのか。
 人生で1度は必ずあるはず。違う種族の魅力に胸が躍るのを。

 猫男もそうだった。犬の少女、兎の女性、狐狼の女性——————
 むしろ、同じ種族の女性の印象が弱く感じる。
 猫男は尻尾をふりふりさせながら、変な気持ちに身を任せてこの場を後にする。