複雑・ファジー小説
- Re: 獣妖過伝録 ( No.171 )
- 日時: 2011/12/04 01:38
- 名前: コーダ ◆ZLWwICzw7g (ID: izFlvzlp)
〜起源、始原、発祥〜
とある古い神社。
空は周りの森林によって見えにくかったが、太陽の光線が森の隙間から入ってきているので晴れていると判断できる。
風も吹いておらず、かなり静かであった。
「あぁ〜……だるいなぁ……」
神社から聞こえてきたのは、思わずこちらも脱力しそうな声。
縁側に座る1人の女性。左足を地面につけていたが、右足は縁側にのせていたので正面から見ると、見事にはしたない姿。
彼女の周りには大量の巻物が散らかっており、正直に言うと扱いは悪かった。
頭には灰色の2つの耳が生えており、とても細い1本の尻尾も生えている。
黒色の髪の毛は、肩までかかるくらいの長さで、前髪は右目を隠すくらい長い。
だが、左目の輝く灰色の瞳はとても力強い印象を与える。
やや暗い赤色の着物を着用していて、右手には十手(じって)を持っている。
そして、どこか争いごとを何度も経験している雰囲気を漂わせる。
「やっぱり、あたいに書物をあさることは向いてないねぇ……」
自分の周りに散らかっている巻物を見つめて、思わず言葉を呟く鼠女。
書物をあさることが嫌いな彼女が、こんなに大量の巻物を読む理由——————
「あたいが望む資料を探せばそれだけで良いのに……多すぎるんだよねぇ」
どうやら、ある資料を探していた彼女。
しかし、その資料の所在が明確に知らされていないのか、巻物を全て調べているように見える。
右手に持っていた十手をそこら辺に投げて、右手に1巻、左手に1巻の巻物を持ち器用に2つ読む鼠女。
だが、ものの5秒くらいで巻物をそこら辺に投げ捨て、自分の頭を両手で掻きまわす。
「あ——!面倒だぁ——!」
昼間の縁側で叫ぶ彼女。
その声はあまりにも大きかったのか、森で休んでいた烏か何かは一斉に飛び上がる。
鼠女は乱暴に、周りに置いてある巻物をどけて仰向けになる。
細い尻尾を動かし、一応何かを考える彼女——————
「——————さん……あまり書物を乱暴に扱わないでください……」
不意に、誰かから声をかけられる鼠女。
仰向けの態勢か一気に起き上がり、また縁側に座る彼女。
「あまりその名前は言わないで欲しいねぇ……自分で言うのもけっこう面倒な名前だし……」
妙に真剣な顔つきで、傍に居た誰かに言葉を飛ばす鼠女。
「そう……ですか。では、なんて呼べばよろしいのですか?」
傍に居たのは自分より、少し年下な女性。いや、少女と言った方が良いだろう。
背中に灰色の大きな翼をつけて、巫女服を着ている。
黒色の髪の毛は、腰にかかるくらい長く、可愛らしさと美しさを兼ね備えた容姿をしていた。
前髪もけっこう目にかかっており、その瞳は藍色に輝いている。
おしとやかな雰囲気とどこか清らからで、安心する雰囲気も同時に漂わせている。
巫女服を着用にするにはとても良い体つきで、無駄な胸は一切ない。正に巫女の中の巫女である。
「そうだねぇ……——————でよろしく」
口元を上げて、明るく言葉を呟く鼠女。
「分かりました。——————さん……所で、お目当ての物は……?」
鳥巫女が鼠女に尋ねる。
すると、彼女は辟易(へきえき)した表情を浮かべ、
「全く見つからないよ。良かったら手伝ってくれないかい?」
「……どういう資料を探しているのですか?」
「……武士と刀の起源、始原、発祥かな」
ほぼ同じ意味の言葉を3つ呟く鼠女。
鳥巫女は艶やかな黒髪を揺らして、くすくす笑う。
「同じ言葉を繰り返さなくても分かります」
「ん?そうなのかい?」
「そうですよ……では、お茶を飲みながら一緒に探しましょう」
少女はお茶の用意をするために、ひとまずこの場を後にする。
鼠女は大量の巻物を縁側から、部屋へ運び鳥巫女が来るのを待つ。
「……まだまだ、——————は続きそうだねぇ」