複雑・ファジー小説

Re: 獣妖記伝録 ( No.52 )
日時: 2011/08/02 23:21
名前: コーダ (ID: LcKa6YM1)

             〜小豆洗い〜


 シャカ、シャカ、シャカ、シャカ——————
 川の下流から聞こえる音。
 リズムが乱れることなく、ひたすら何かを、擦りあうような音が響く。
 シャカ、シャカ、シャカ、シャカ——————
 すると、その音を聞きつけた男女の2人が居た。
 1人は、頭の上に兎のように長くて白い、ふさふさした耳が2本あり、女性用の和服を着ていた。
 髪の毛も白く、長い。右目にはモノクルをつけている。
 右手には、とても大きな弓をもっていた。猪くらいなら、即死させてしまう威圧感である。
 極めつけに、首にはお守りかお札か分からない物が、紐で繋がっている。
 もう1人は、背中に大きな翼をつけており、男性用の和服を着ていた男性。いや、少年と言った方が良いだろう。
 黒い髪の毛は肩までかかるくらい長く、ぱっと見少女にも見える顔立ちだった。
 そして、女性と対照的に左目にモノクルをつけていた。
 なぜか、妙な雰囲気を漂わせていたのも、印象的だった。

「むっ……?」

 女性がそう言うと、目の前に居た何かが突然、振り向く。
 子供みたいな顔つきと体つき、両手にはざるを持っていて、その中には大量の小豆が入っていた。
 女性の首についているお札かお守りみたいな物を見つめると、子供は黙って、近づく。
 そして、ざるに入った小豆を女性へ渡す。

「良いのか?」

 こくりと頷く子供。
 少年は、その様子を、どこか不思議そうに見ていた。


                ○


 シシャ、シシャ、シシャ、シシャ——————
 川の下流から聞こえる音。
 リズムが乱れることなく、ひたすら何かを、擦りあうような音が響く。
 シシャ、シシャ、シシャ、シシャ——————
 すると、その音を聞きつけた男女の2人が居た。
 灰色で、とてもさっぱりするくらい短い髪の毛。前髪は、目にかかっていなかった。
 頭には、ふさふさした2つの耳と1本の尻尾があり、瞳は青緑色をしていた。
 男性用の和服を着て、腰には、立派な刀をつけていた。
 そして、鞘にはお札か、お守りか分からない物が、紐で繋がれている。
 その男性の後ろに、子犬のように隠れる少女。
 灰色の髪の毛で、肩にかかるくらいの長さだった。前髪は、非常に目にかかっており、四角いメガネをかけていた。
 頭には、男性と同じふさふさした2つの耳と1本の尻尾があり、瞳は闇のように黒かった。
 巫女服みたいな、神々しい服装で身を包み、とても可愛らしかった。
 神々しいが、どこか禍々しい雰囲気を出す。しかし、獣のような鋭い眼光は全くなかった少女。

「そなたは……?」

 男性がそう言うと、目の前に居た何かが突然、振り向く。
 子供みたいな顔つきと体つき、両手にはざるを持っていて、その中には大量の小豆が入っていた。
 男性の鞘についているお札かお守りみたいな物を見つめると、子供は黙って、近づく。
 そして、ざるに入った小豆を男性へ渡す。

「かたじけない」

 こくりと頷く子供。
 少女は、その様子を見て、頭の中に疑問符を思い浮かべた。


                ○


 シャカシャ、シャカシャ、シャカシャ、シャカシャ——————
 川の下流から聞こえる音。
 リズムが乱れることなく、ひたすら何かを、擦りあうような音が響く。
 シャカシャ、シャカシャ、シャカシャ、シャカシャ——————
 すると、その音を聞きつけた男女の2人が居た。
 黒くて、首くらいまでの長さがある髪の毛をしていて、それはとても艶やかであった。前髪は、目にけっこうかかっている。
 頭には、ふさふさした2つの耳があり、瞳は黒紫色をしていた。
 男性用の和服を着て、輝くような黄色い2本の尻尾を、神々しく揺らす。
 そして、首にはお札か、お守りか分からない物が、紐で繋がれている。
 極めつけに、眠そうな表情と、頼りなさそうな雰囲気を漂わせていた男。
 金髪で、腰まで長い艶やかな髪の長さ。頭には、ふさふさした2つの耳がある。
 瞳は金色で、見つめられたら、思わず魅了されてしまうような眼光。
 上半身には、女性用の和服を着て、下半身には、よく巫女がつけていそうな袴を着ていた。
 そして、輝くような黄色い1本の尻尾を、神々しく揺らしていた。
 もっと言ってしまえば、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉が非常に似合っていた女。

「君はぁ……?」

 男性がそう言うと、目の前に居た何かが突然、振り向く。
 子供みたいな顔つきと体つき、両手にはざるを持っていて、その中には大量の小豆が入っていた。
 男性の首についているお札かお守りみたいな物を見つめると、子供は黙って、近づく。
 そして、ざるに入った小豆を男性へ渡す。

「すまないねぇ……小豆洗い(あずきあらい)」

 こくりと頷く子供。
 女性は、その様子を見て、大きく唸った。