複雑・ファジー小説

Re: 光の堕天使 〜聖なる力を持つ堕天使の物語〜 ( No.297 )
日時: 2011/12/04 20:06
名前: 水月◇51watermool16 (ID: SuDcL78Z)

「……消えた……? あいつら、何しにここへ来たんだ…?」

キルがそう言うと、ホルンは首を振って答えた。

「分からない。
唯一の手がかりは、姉さんを狙っているという事だけ。
それ以外は何も……。」

「ルエを狙っている……。つまり、ルエには何か特別な力があるっていう事なのか?」

「えぇ。以前、イアンという悪魔と戦った時、姉さんの持つ力が欲しいって言ってたわ。」

「そうか……。」

キルはそう言うと、心中で呟いた。

(ルエの持つ力……いったいどんな力なんだ……。)

すると、

「ほぅ……。少しはやるようだな……。」

と、若い男の声が聞こえた。

「誰だ!?」

キルがその男に叫ぶと、男は闇の中から姿を現した。
鋭くとがった悪魔の角が二つあり、赤色の瞳をしているその男は、笑みを浮かべてこう言った。

「俺はウィル。見ての通り、悪魔族だ。」

「いったい何しにここへ来た!?」

「ルエを渡してもらおうか。俺たちにはどうしても、そいつが必要だからな。」

ウィルがそう言うと、ホルンは杖で光の魔法を作り出した。

そして、

「エズア!!」

と叫んで、その魔法を放った。
それは光るオオカミとなって、ウィルに向かっていく。

だが、

「弱いな。」

そう呟いたウィルは、片手で簡単にオオカミを消滅させた。

「えっ……!?」

ホルンはその光景に驚き、目を見開く。
すると、ウィルは一瞬にしてホルンに近づいた。

そして、高速で呪文詠唱をした後、彼女に向かって剣を振り下ろす。

だが、

「グラスフェレア!!」

と、ホルンが唱えた草の魔法で、ウィルは吹き飛ばされた。

「やるな……。さすが、ルエの妹だけの事はあるな。」

「どういう事!?」

「それは後で教えてやるよ。」

ウィルはそう言って、姿を消す。
そして、ホルンの背後に現れると、彼女の首筋を軽く叩いた。

トンッ

「!? ……うっ……ぁ……。」

ホルンは小さく呻くと、ウィルに抱えられるようにして倒れた。

「ホルン!! ……くそ……ホルンを放せ!!」

キルはウィルにそう叫ぶと、剣に炎を纏わせて火炎斬を放つ。

だが、

『お前の力はこんなものか?』

という声がしたかと思ったら、キルの前に一人の男が現れた。

その男はウィルと同じように、片手でキルの技を消滅させた。

「なっ……!?」

キルはその光景に驚き、呆然と立ち尽くす。
だが、すぐに表情を変え、剣を握り締める。

そして、

「うおおおおおおおおおおおお!!」

と、咆哮をあげて、男に向かっていく。

しかし、男はキルの剣を受け止めると、思い切りキルを蹴り飛ばした。

ドゴッ!!

「……っ、ガハッ……!!」

キルは蹴り飛ばされ、地面に転がり落ちた。
だが、すぐに立ち上がり、剣に光を纏わせる。

そして、ものすごい速さで男に向かっていく。

すると、

「闇の力をその身に刻め!! シャミズサースト!!」

男は大声で呪文詠唱をすると、両手から闇の波導を放った。
キルは剣を盾にするが、その波動に耐えきれず、吹き飛ばされる。

そして、寮の壁に激突し、地面に叩きつけられた。

「くそ……強い……。」

男の実力を体感し、悔しそうに呟くキル。
すると、そんな彼に男が近づいてこう言った。

「俺はラスー。ウィルと同じ悪魔族だ。」

「悪魔族……何しにここへ来た……。」

「いきなりで悪いが、しばらく眠っててくれ。」

ラスーはそう言うと、キルの腕を思い切り引っ張る。
そして、彼のみぞおちに当て身を食らわせた。

ドスッ!!

「……ぐっ……ぅ……。」

キルは、ホルンと同じように呻くと、そのままラスーに抱えられるようにして倒れた。

「さて、ターゲットは捕獲したし、行こうか。」

「あぁ。」

ウィルはホルンを、ラスーはキルを肩に担ぐと、闇の魔法を使った。

ウォン

という音がして、闇が二人を包んだ。
そして、闇が晴れた頃には、二人の姿はもうなかった。