複雑・ファジー小説

Re: 光の堕天使 〜聖なる力を持つ堕天使の物語〜 ( No.323 )
日時: 2011/12/28 21:37
名前: 水月 ◆Iy3sft.EfA (ID: SuDcL78Z)

「…………ん……。」

昏睡状態に陥っていたルエは、うっすらと目を開ける。

「……こ……こは……?」

そう呟き、辺りを見回す。
白い壁と白い天井が、彼女の赤い瞳と、黒い瞳に映った。

ゆっくりと起き上がり、今までの事を思い出そうとする。
すると、

「目を覚ましたんですね!! よかった……!!」

という声がした。

声のしたほうに顔を向けると、院長が息を弾ませて立っていた。

「あなたは……?」

ルエがそう尋ねると、院長はルエに近づいてこう言った。

「私はライです。ルエさん、あなたは二ヶ月間、昏睡状態だったんですよ。」

「昏睡状態……!? 何故そうなったんですか!?
あと、なんで私の名前を……?」

すると、ライはルエが寝ているベッドの隣にある椅子に腰かけて、こう言った。

「何故あなたの名前を知っているのかというと、以前、あなたのお母さんと、話をしたことがあったんです。
もちろん、あなたのことについてです……。」

「私のことについて、お母さんと話をしたって……。
いったい、どんな内容なんですか?」

すると、ライは声を潜めて言った。

「……あなたの体内には、『聖なる力』という力がある事。
その力を、悪魔族たちが狙っている事です……。」

「……聖なる力があるという事は、悪魔族の一人が言っていたのを聞きました。
もちろん、その力を狙っている事も……。」

「……すでに承知、という訳ですか……。」

ライがそう言うと、ルエは迷いもなく頷いた。
すると、ライは一つ咳払いをして、話を切り出した。

「ルエさん……。
あなたはここに運ばれる前、複数の男から暴行を受けてましたよね?」

「……はい。森で、五人の男に囲まれて……殴られ、蹴られました。
その後、一人の男が交渉をしてきたんです。
もちろん、断りました。」

「なるほど……。その後は?」

「そしたら、突然棒か何かで頭を殴られて……。
その後は、何も……。」

「そうですか……。(あの男たちは、何の目的でルエさんを……。)」

ライは心中でそう呟くと、遠くを見るような目で、森が映っている窓を見つめた。