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その瞬間、ルエはとてつもない恐怖に襲われた。
彼女は知っている、この声の主を。

そして予知した。その人が現れた時、何かが起きるという事を。

「…誰?」

アリーが警戒心を持ちながら、そう問う。
それからしばらくして、声主は森から出てきた。

頭にある光輪からして、おそらく天使族だろう。
テルテル坊主のような姿に、紫の瞳を持ったその天使は、こう名乗った。

「あたしはゼルフ。大丈夫、あんた達を襲いはしないわ。」

「なら、お前は何しにここへ来た?」

キルが尋ねると、ゼルフは恐ろしい笑みを浮かべて言った。

「知ってる?　ルエはね……『殺人鬼』なの。」

「「!!」」

「えっ…。」

キルとホルンは、絶句してその場に固まり、ココアは戸惑う。

「……嘘…。」

アリーは震えた声でそう呟いて、崩れ落ちた。
その光景を見ると、ゼルフは右手に文字を描き、こう唱えた。

「反響。」

すると、彼女がさっき言った言葉が、文字通り『反響』した。
そして、森の中に響いていく。

「……ぁ…来る…。」

予知していた事が当たり、さらに何かを感じたルエは、少し後ずさりする。
アリーがその様子に気づき、彼女に尋ねる。

「ルエ…?」

だが、ルエはアリーに気づかず、後ずさりを続けていた。
すると、

「殺人鬼だって…?」

「そう聞いたから、本当だろう。」

「怖いわね…。ここにいさせるわけにはいかないわ。」

森の方から、様々な声が聞こえてきた。
ゼルフはそれを聞くと、また恐ろしい笑みを浮かべた。