複雑・ファジー小説
- Re: 光の堕天使 名前改名! ( No.574 )
- 日時: 2012/10/26 18:42
- 名前: エストレア ◆p0imGsDc06 (ID: SuDcL78Z)
一瞬、何が起こったのか、全く分からなかったルエは、叩かれた右頬を左手で押さえる。
痛みがはしる。衝撃もあってか、少し熱い。
「っ…。」
唇を噛み、アリーを睨みつける。
その瞳は、怒りと憎しみの色に染まっていた。
だが、彼女は怯みもせずに、こう問うた。
「…あのさ、ルエ。私達がどれだけあなたの事を心配したと思ってる?」
「それはうわべだけだろう? 本当は自分の事しか考えていない、違うか?」
そんなアリーを対照的に、ルエはそう問い返した。
憎悪の色は、まだ消えないでいる。
「違う。」
アリーは首を振って答えた。
彼女の言葉には、はっきりとした自信があった。
だが、ルエは嘲笑い、アリーの腕を掴むと、壁に押しつける。
動揺しているアリーをよそに、彼女はこう言った。
「違うだと? 笑わせやがって。じゃあ問うが、お前はそれを断言出来るのか? 私の全部を知ったうえで、違うと言えるのか? 生憎、私は他人を信じ切れていない。過去の因果で、こうなったんだからな。」
彼女の言葉に、アリーはふと思った。
この子は寂しがり屋で、孤独や他人の本性を知って生きてきたのだ、と。
だから憎んではいるけど、本当は…本当は、他人の信じ方や接し方を知らないのだ、と。
睨みつけているルエに、彼女は微笑んで言った。
「あたしは、あなたの全部を知っているわけではないよ。
でも、あなたはただ…寂しかったんだね。ずっと、傍にいる人が欲しかったんだね。」
すると、ルエは少し驚いた表情をする。
その後俯いて、掴んでいたアリーの腕を、そっと離した。
そして、ぽつりと呟いた。
「お前に…私の何がわかる…。」
悲しみからか、グッと握りしめたその手は、震えていた。
アリーはルエの手を、自分の手で優しく包み込むと言った。
「全部じゃないけど、分かるよ。友達だもの。ルエ、あなたは…『一人じゃない』。
皆が傍にいるから、もう一人で、辛い事を抱え込まなくたっていいんだよ?」
一人じゃない。その言葉が彼女の心に響いたのか、ルエは泣き崩れた。
アリーは微笑んで、泣いている彼女の背中を、優しく擦る。
泣きながら、ルエは途切れ途切れに言葉を紡いだ。
「独りに、なるのが、嫌だったんだ。でも、また過去みたいに、なるのが、怖くて…。さっきも、信じていいのか、分からなかったから、疑ってたんだ…。ごめん、アリー…。」
そんな彼女に、アリーは首を振って言った。
「いいのよ、気にしないで。
少しずつ、ゆっくりでもいいから、他人を信じればいい。私やキル達も、あなたに頼られるように、出来る限りの事はするから。一緒に頑張って行こうよ。」
「…アリー……ありがとう…。ありがとう…。」
ルエはそう言って、アリーの身体に顔をうずめて、泣いた。