複雑・ファジー小説

Re: 光の堕天使 次章予告更新! ( No.594 )
日時: 2013/04/13 18:31
名前: エストレア ◆p0imGsDc06 (ID: 6U1pqX0Z)


第五章「休息と甘苦い恋心」

小鳥たちのさえずりが、聞こえる。
窓からあたる陽射しを浴びて、堕天使—…ルエは、うっすらと目を開ける。

光が眩しいのか、少し細めてから、ゆっくりと体を起こす。

「…朝、か…。」

そう呟いて、ふぁ…と、小さく欠伸をした。
まだ眠いのか、瞼が重い。

部屋を出て、十秒程進んだところにある洗面所に向かい、洗顔を済ませる。

「…ふぅ。」

タオルで、顔についた雫を拭う。
ふと鏡を見ると、そこには、さっぱりとした彼女の顔があった。

「……。」

無言で、鏡に映っている自分を見つめる。
そんな彼女の脳裏に、あの時のアリーの言葉が、蘇る。

『理由っていうのかは、よく分からないけど…とにかく、嬉しいの!!』

「……嬉しい、か…。」

独りでに呟いて、ルエは小さく、微笑した。

(自分はもう…一人じゃないんだ…。ここにいても、いいんだ…。)

いつしかそう思い始めた彼女の心に、明るさが戻ってくる。
そんな明るさを持ったまま、ルエは食堂の方に進むと、ドアノブを回して、扉を開ける。

すると、そこにあったのは————————






















おかしな恰好をした、アリー達の姿だった。

「……あれ?」

突然起こった出来事を前に、ルエは固まった。
そんな彼女に気づいてか、

「あ、おはよう! ルエ!」

アリーが声をかけてくる。
すると、ルエはぎこちない動きで、回れ右をする。

彼女以外の全員が首を傾げると、ルエはこんな事を言い放った。

「…部屋、間違えました……。」

そして、またぎこちない動きで、踵を返そうとした。

『えぇぇええぇぇぇえぇ!?』

予想外な行動に、全員が驚く。
そして慌てて、アリーがルエの右腕を掴み、こう言った。

「ちょっと待って!! ここ食堂で合ってるよ!?」

「いや、どうみてもおかしい……。」

振り返ってから言ったルエの言葉が、途中で、突然止まる。
彼女が見ているのは…アリーの頭にある、鬘だった。

「どうしたの?」

彼女が不思議そうに問うと、ルエはそれをしばらく見つめた後、彼女の顔を見て思わず、

「…ふふっ。」

と、笑みを漏らした。

「え? 何? どうしたの?」

再度彼女に問うアリーに、ルエは口を左手で押さえて、必死に笑いを噛み殺そうとしている。

「……アリー…それは…反則だと思うんだが…。」

「?」

不思議に思ったアリーが、彼女の顔を覗き込む。
ふと、ルエが彼女の顔を見た瞬間、

「…アッハハハハハハハハハハハハ!!」

とうとう堪えきれなくなり、ルエは大笑いした。

「え? 何がおかしいの?」

なんで笑っているのか分からないのか、アリーが首を傾げる。
そんな彼女に、ルエは笑いながら言った。

「か、鏡見たら…分かるかもな…ククク…。」

そして、左手で床を激しく叩いた。
その様子を見て、ルエ以外の全員は、こんな事を思った。

(ルエ…やっと笑ったな…。)

その後、少しずつ笑いが治まった彼女を木の椅子に座らせると、鬘を取らないまま、彼らは食事を始めた。