複雑・ファジー小説
- Re: 光の堕天使 ( No.71 )
- 日時: 2011/08/03 20:27
- 名前: 水月 (ID: SuDcL78Z)
—朝—
小鳥たちが、歌うようにさえずっている。
かなりの疲労で倒れたハープとロンは、太陽の光で目を覚ます。
「・・・ずっと寝てたみたいね。」
そう言い、ハープは苦笑する。
ロンは何も言わず、ハープと同じく苦笑する。
やがてロンは、光に包まれて消えた。
ハープの光造魔法の効果が、切れたのだ。
ハープはその光景を見送ると、眠っているルエを、優しい声で
「ルエ、朝よ。起きなさい。」
と言い、ルエを起こす。
ルエは、ハープを見てにこりと笑い、
「お母さん、おはよう。」
と言った。
朝食を済ませると、ハープはルエにこう言った。
「私が昨日言ったこと、覚えてる?」
「うん!覚えてるよ!確か、森を抜けて左側にある建物に行くんだよね?」
「そうよ。」
ルエの問いに、ハープはそう答えた。
「後、このペンダントを使って天使になるんだよね。ちゃんと覚えてるよ!」
ルエは、首に下げているペンダントを見せながら、誇らしげにそう言った。
「よく覚えてるわね。じゃあ、今日は寮に行きましょうか。」
と、ハープは言った。
ルエは笑顔でうなずいた。この後起こることが、ハープと一緒にいる最後の時間だと知らずに。
外に出た二人は、森のことを話しながら、寮に向かって歩いていた。
話しながら歩いているうちに、光が差し込んで来た。もうすぐ出口なのだ。
「もうすぐ出口だよ!」
嬉しそうに叫ぶルエ。ハープは、笑顔を見せただけで、何も言わなかった。
森の外に出た二人。ルエは右側に建物があるのに気付き、ハープに、
「なんで右側に建物があるの?」
と、問うた。
ハープはそれに気づき、苦笑をして、
「ごめんね。間違えちゃったみたい。」
と言った。
ルエは、
「気にしてないよ。」
と、笑顔で答えた。
二人は、寮の中に入ろうとした。だが、急にハープの体が光った。
ルエはびっくりして、ハープに叫んだ。
「お母さん!?どうしたの!?」
「ごめんねルエ。どうやら、私の役目はここまでみたい。」
「えっ!?どういうことなの!?」
「今は言えないわ。時が来たら、話すわね。」
そう言うと、ハープはルエに向かって、
「さようなら・・・。ルエ・・・。」
と言い、光に包まれ消えていった。
「お母さん!?返事をしてよ、お母さん!!」
ルエはハープの名を呼ぶが、ハープの姿、声はもう、どこにもなかった。