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複雑・ファジー小説
- Re: 血染めの彼岸花【月夜に降り立つ処刑人】 ( No.19 )
- 日時: 2011/07/13 14:36
- 名前: 王翔 (ID: 65byAhaC)
第十三話
沙零は、朝から神谷神社の前に来ていた。
とりあえず、神社の庭でうろうろしていた。
「いないのかなー……」
神社の本殿の方に目を凝らすが人の気配はしない。
聞こえるのは、虫の鳴き声だけだった。
「……やっぱり、いないのかな」
そう呟くと、背後から声がした。
「いる。何か用?」
「うお……で、出ました」
沙零の背後には、さざめが立っていた。
「出て来てくれたんですね」
にこっと笑ってみた。
「神社の前で不審者がうろついてたら、流石に出る」
「ふ、不審者じゃないです!!」
沙零は、大声で反論した。
さざめは、驚く様子もなく、無表情のまま、
「何しに来たの?お参り?」
「あ、うーん……そんなところです」
沙零は、苦笑いをしながら返事をした。
なんとなく、さざめに会いに来たとは言いづらかった。
帰れと言われそうだし、それよりは神社に用があると言う方がもしかしたら話せるかもしれない。
「華影さん、夜……外に出たことはある?」
「え……?」
沙零は、あの吸血鬼の処刑の現場を思い出した。
一瞬、言おうかとも思ったが、壇来の言葉を思い出した。
『くれぐれも、口外はするな』
「ううん……出てないです」
「何も……見なかった?」
さざめは、試すように質問してきた。
「はい、何も」
「よかった……あなたが、秘密を守れる人で」
さざめは、ほんの少し、微笑んだ。
「あ、あの……さざめさん!」
「なに?」
「えーと……また来てもいいですか?」
恐る恐る、聞いてみた。
「……うん」
さざめは、こくりと頷いた。
仲良くなれるといいな。
それにしても、さっきのさざめの質問……もし、あの現場を見ていたと話したら、違う結果を迎えた気がする……
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